アルコールが膵臓に及ぼす影響

膵臓(すいぞう)は、胃の後ろにあり多くの役割を持つ大事な臓器です。以下に膵臓の役割を示します。アルコールは膵臓に炎症を引き起こし、膵臓の働きを低下させる恐れがあります。

【膵臓の役割】

① 消化を助ける

食事をとった後に腸で吸収されるまでに消化される必要があります。栄養素のタンパク質、脂質、糖質のそれぞれを消化するための酵素があります。膵臓からはそれぞれの消化酵素が分泌されます。タンパク質(トリプシン、ペプチダーゼ)、炭水化物(アミラーゼ)、脂質(リパーゼ)。

膵臓から分泌される消化酵素により栄養素を効率よく吸収することができます。

② 血糖値のコントロールを行う

吸収されたブドウ糖(グルコース)はエネルギー源として重要です。血液中のグルコースが増えると、膵臓からグルコースを利用し血糖値を下げるホルモン(インスリン)が分泌されます。

逆に血糖値が下がり過ぎた場合に、貯蔵されている糖質を利用し血糖値を上げるためのホルモン(グルカゴン)が分泌されます。

アルコールによる急性膵炎

アルコールは急性膵炎の原因になります。

アルコールを一度に多量摂取したり定期的に摂取すると膵臓に炎症をきたすことがあります。膵臓に炎症を起こす正確な機序ははっきりしていません。

膵臓に炎症が起こると膵臓に含まれる消化酵素が膵臓をさらに攻撃し破壊する可能性があります。膵臓が壊されていくと機能が落ちていきます。

重症の膵炎では、最悪の場合は亡くなることもあります。

膵炎が発症した場合は、それ以上に膵臓の破壊を進めないように厳重な治療・管理が必要です。

急性膵炎の症状

急性膵炎の症状としては以下のようのものがあります。

  • 急な上腹部痛
  • 吐き気、嘔吐
  • 発熱
  • 食欲不振
  • 軟便・下痢

膵炎には軽症から重症までステージがあります。重症になると上記の症状以外に、血圧低下、頻脈、意識障害などが見られます。

急性膵炎の治療

急性膵炎の治療では、まず膵臓を休ませることです。膵臓に負担をかけないように、安静・絶食・点滴治療がおこなわれます。炎症の延焼を防ぐために、急性期が過ぎるまでじっくりと治療されます。

再発しないように禁酒が絶対に必要になります。治療が必要な急性膵炎を発症した場合は、半年以上の禁酒とその後も可能な限りの禁酒が必要です。

また、高脂肪食や喫煙も膵炎のリスクになります。脂肪の少ない食事に切り替えて、禁煙をしましょう。

急性膵炎の経過

急性膵炎後には、膵臓にダメージが残ります。そのため、急性膵炎のエピソードを繰り返していると膵臓が機能しなくなり慢性膵炎へ移行してしまいます。

慢性膵炎にしてはいけない

重症の急性膵炎や繰り返す膵炎により膵臓の細胞は線維へ置換されていきます。上記のような膵臓の機能落ちて、いろいろな問題が生じるのが慢性膵炎です。

慢性膵炎の症状

慢性膵炎になると上記の急性膵炎の症状を慢性的に自覚するようになります。さらに下記のような症状も認めるようになります。

  • 消化酵素の減少による症状:体重減少、脂肪便、全身倦怠感
  • インスリンの減少による症状:高血糖による口渇、多尿、糖尿病の発症

慢性膵炎の治療

慢性膵炎の治療は禁酒、さらにそれぞれの症状に対する治療が行われます。

  • 炎症の進行抑制:薬物治療
  • 腹痛:鎮痛薬
  • 消化不良:消化酵素の補充
  • 糖尿病:インスリン治療

慢性膵炎にならないように習慣的なアルコール摂取を避けましょう。

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