閉塞性の睡眠時無呼吸の治療には以下のような項目があります。
- 肥満の解消
- CPAP治療
- 生活習慣の是正と運動
- 睡眠姿勢を変える
- 薬物治療
- 口腔内装置
- 外科治療
- 植込み型舌下神経刺激療法
その中でも、治療の基本は肥満の解消とCPAP治療になります。
肥満の解消
肥満は閉塞性無呼吸を発症させるリスクだけでなく重症度とも関係しています。減量することで睡眠時無呼吸の重症度が改善することがわかっています。
さらに肥満に付随する心血管病のリスクを減らすことにも繋がります。
生活習慣の是正と運動
ある種の生活習慣によりOSAに影響を与えることがわかっています。それは、体重、喫煙、飲酒、睡眠薬、運動です。
- 飲酒:呼吸中枢に影響し、筋肉も弛緩させ、OSAは増悪します。飲酒は控えた方がいいでしょう。
- 喫煙:OSA発症のリスクが高い場合、影響を与えることがあるため禁煙が勧められます。
- 睡眠薬:ベンゾジアゼピン系睡眠薬は筋肉の弛緩により、OSAに影響するので避けます。
- 運動:体重が減らなくても、運動はOSAに対して改善させる方向で影響します。
CPAP治療
CPAP(シーパップ)治療は、閉塞性睡眠時無呼吸に対して行われる治療です。
本体をベッドサイドに置き、チューブを通って鼻や口を覆った専用のマスクから空気を押し込みます。
CPAPの働き
CPAPで使用されるマスクで、鼻腔や口腔内をしっかりと塞ぎます。持続的に空気の圧力をかけ続けることで、喉の奥の気道の閉塞を防ぎます。
息を吸う時も吐く時も一定の圧力がかかります。かかる圧力は設定することができます。
CPAPは、睡眠中の異常な呼吸エピソードを減少することができます。それにより、睡眠時無呼吸による症状の改善と、無呼吸によって起こりうる問題を改善させることができます。
CPAPの適応
CPAPの適応は重症の「閉塞性」睡眠時無呼吸症候群です。導入には以下の項目を満たす必要があります。
検査 | 基準 |
---|---|
簡易モニター検査 | REI 40 回/時間 以上 |
睡眠ポリグラフ検査 | AHI 20 回/時間 以上 |
CPAPの効果
CPAPは睡眠時無呼吸による症状を軽くしたり、睡眠時無呼吸症候群による合併症を減らします。
睡眠時無呼吸による症状を改善
- 睡眠の質が向上する
- いびきが減る
- 昼間の眠気が改善
- 気分が良くなる
無呼吸により起こりうる問題を改善させる
- 不整脈が減る
- 高血圧を改善
- 脳卒中のリスクを減らす
- 記憶力を向上させる
- 認知能力を向上させる
ただし、CPAPは空気の圧力で気道を確保する治療のため、違和感などでうまく継続できない方もいます。
睡眠時無呼吸症候群による問題を改善する効果があるため、できるだけ慣れるように頑張りましょう。
口腔内装置(OA:oral appliance、スリープスプリント)
口腔内装置(OA:oral appliance)は、上の歯列と下の歯列のそれぞれのマウスピースを作成し、下顎が前方に向かうように組み合わせたものです。
スリープスプリントとも呼ばれます。睡眠時無呼吸、いびき症に対する治療装置です。
口腔内装置の治療適応は、中等症以下の閉塞性無呼吸(OSA)です。
ただし、重症のOSAの場合でもCPAPの継続が難しい場合は、口腔内装置の使用を検討することもあります。
口腔内装置は歯科で作成されます
その他の治療
薬物治療
OSAに対する薬物治療で、有効性が確立しているものはありません。いくつかの薬がOSAに対する効果を検証されています。今後の経過では有効性が示される薬が使えるようになるかもしれません。
外科的治療
拡大した扁桃腺、鼻ポリープ、顎や舌の異常などが気道閉塞を引き起こすことがあります。それによりCPAP治療がうまく機能しなかったり、続けられなかったりします。
閉塞性無呼吸に対する外科的治療には、気道閉塞に対する手術と肥満に対する手術があります。
- 上気道手術(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術など)
- 顎矯正手術
- 腹腔鏡下スリーブ胃切除術
- 上気道手術・顎矯正手術
鼻詰まりがあるとCPAPが使用しにくくなることがあります。鼻閉に対する外科的治療はCPAP治療の認容性があがります。
- 腹腔鏡下スリーブ胃切除術
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は、胃を部分的に切除し胃を管状に形成する手術です。胃の容量が80%程度減少します。高度肥満(BMI 35以上)で合併疾患(糖尿病、高血圧、脂質異常症、肝機能障害、睡眠時無呼吸症候群など)があり、6ヶ月以上治療を行なわれても肥満が解消されない場合に適応となります。
植込み型舌下神経刺激療法
植込み型舌下神経刺激法では、閉塞性無呼吸に関与しているとされる咽頭開大筋群を刺激する方法です。呼吸を検知するセンサーが息を吸っていると認識したら、筋肉に刺激が加わり気道が開く仕組みになっています。
治療の適応には、CPAPが効かない、肥満が高度ではないなど複数の基準があります。