心不全の症状や徴候を自分で確認(モニタリング)していると、水分の過剰や血圧の上昇による心不全の増悪を軽いうちに防ぐことができ、入院を減らすことが期待できます。
症状や兆候を点数化し、早目に治療介入を目指す取り組みが多くの施設で行われています。
症状のモニタリング
心不全の患者さんは、以下のような心不全の症状を自分でモニタリングすることが勧められます。それぞれの症状に応じて、その原因を推定することができます。
症状 | その原因 |
---|---|
息切れ・呼吸苦 | 動作時、仰向けで横になっている時の症状→ 体の水分が過多、血圧上昇による負担増加、肺気腫などの併存疾患、狭心症 |
浮腫・むくみ | 体の水分が過多 |
胸痛 | 狭心症、体の水分が過多、血圧上昇による負担増加、併存疾患、不安 |
食欲低下 | 体の水分が過多、不安、腎臓の機能低下 |
倦怠感・疲れやすさ | 体の水分が過多、心不全の進行、薬の副作用、睡眠障害、貧血 |
咳・喘鳴 | 体の水分が過多、薬の副作用、肺気腫などの併存疾患、血圧上昇による負担増加 |
喉の渇き | 脱水、心不全の進行、薬の副作用 |
動悸 | 不整脈、不安 |
めまい | 低血圧、心不全の進行、不整脈、脱水 |
活動性の低下 | 心不全の進行、貧血 |
どのような症状がでたらかかりつけ医療機関を受診するのか、主治医と相談しておきましょう。
心不全兆候のモニタリング
症状だけでなく、自宅でできる兆候のモニタリングとして、体重、脈拍、血圧があります。それぞれが変化を確認することで、症状が出る前に心不全が悪くなってないかを知ることができます。
体重
体重の増減で体内の水分量の変化を推定することができます。
心不全の急な増悪が起こる前に、体重が増加していることが多いです。短期間で2kg以上の体重増加がある場合は、かかりつけに連絡しましょう!
できるだけ毎日、同じ条件(例えば、朝のトイレの後や入浴前など)で同じ体重計を使用する。心不全が落ち着いている状態の体重を主治医に設定してもらいます。
突然の体重増加(短期間で2kg以上の増加):体の水分が過多。心不全症状がでる可能性。
体重の減少:低栄養、脱水
脈拍
心拍数の上昇や低下は不整脈の発生を示しているかもしれません。
不整脈がきっかけで心不全が増悪することもあります。脈拍がいつもより多めに変化しているなら、できれば検脈をして脈が乱れていないかも確認したほうが良い。
増加:体の水分が過多、不整脈、心不全の進行
減少:薬が効き過ぎている、徐脈性不整脈
乱れている:不整脈
血圧
急な血圧上昇も心不全増悪のきっかけになりやすいです。しっかりモニタリングしましょう。血圧が上がらないように塩分摂取の制限を心がけましょう。
いつもより高い:高血圧は心不全症状の急な増悪の原因となる
血圧が低い(100mmHgをきる):薬が効き過ぎているかも。起立性低血圧によるめまいや転倒のリスク
副作用や合併症のモニタリング
心不全薬は副作用を自覚した時は主治医に連絡しましょう。どのような副作用があるのかは、内服している薬の種類によって異なります。
- めまい
- 血圧低下
- 徐脈
- 倦怠感
- 発疹(薬疹)
特に高齢者の場合、血圧低下や徐脈による症状(めまい、ふらつきなど)が出やすい傾向にあります。
また、一部の心不全薬で腎障害が進行することがあります。それにより心不全が増悪する場合もあります。血液検査で確認する必要があります。
心不全増悪のサインがあったら
心不全の増悪が懸念される場合は、主治医に対応を相談します。
一部の心不全患者さんは、セルフモニタリングで得た情報(症状や体重など)から利尿剤の調整をしたり、活動量や水分摂取の調整をしたりすることがあります。
- 医療提供者に連絡
- 利尿量を調整
- 活動レベルを調整
- 水分と塩の摂取量を減らす
利尿剤の調整
利尿剤は尿量を増やすことで体にたまった水分を体の外にだす効果があります。
うっ血の症状が増悪した時や体重が設定した値を超えた時に、利尿剤を追加で内服するように医師から指示がでることがあります。指示通り内服し、改善が見られなければ主治医に早めに連絡し、診察を依頼しましょう。