心房細動の脳梗塞リスクを評価する新しい基準:HLET-E2S2スコア

日本循環器学会と日本不整脈心電学会が合同で2024年に「不整脈治療」に関するガイドラインのアップデートが行われました。

アップデートされた項目のうち、脳梗塞のリスク評価について解説します。

新しい日本人向け脳梗塞リスク評価:HLET-E2S2スコア

心房細動の重大な合併症の一つに脳梗塞があります。心房細動に起因する脳梗塞(心原性脳梗塞)は、非常に重篤な状況になってしまいます。

心房細動の患者さんがすべて脳梗塞を発症するわけではありません。どのような因子を持っていたら脳梗塞になりやすいかを推定するための指標が使われています。

最も有名なリスク評価はCHADS2スコア(チャズ スコア)と呼ばれるものです。

CHADS2スコア

項目点数
心不全・心機能低下がある
高血圧がある1
年齢が75歳以上である1
糖尿病がある1
脳梗塞や一過性脳虚血発作がある2

CHADS2スコアは欧米人を対象とした研究の結果で提示されたリスク評価であり、日本人でのリスクとは多少違う可能性が指摘されていました。

CHADS2スコアの計算
CHADS2スコア以外のリスク因子

CHADS2スコアだけでなく、以下の項目に該当する場合は脳梗塞発症のリスクがあることをガイドラインは提示してきました。

  • 年齢 65歳以上
  • 腎臓の機能が落ちている
  • 何らかの心筋の病気(心筋症
  • 進んだ動脈硬化(心筋梗塞、大動脈のプラーク、下肢の動脈硬化)
  • 持続性の心房細動
  • 体重が少ない(50kg以下)
  • 左心房が拡大している

そこで、日本人を対象とした研究の結果を統合した解析研究であるJ-RISKが行われました。

その結果から、独立した脳梗塞のリスク因子として6項目が提示されました。この6項目を点数化して合計したものが「HLET-E2S2スコア」です。

INI危険因子点数
HHypertension高血圧
EElderly, age 75-84 yrs年齢 75~84 歳1
LLow BMI, <18.5kg/m2BMI 18.5 未満1
TType of AF (persistent/Permanent)持続性 / 永続性1
E2Extreme elderly, age ≥ 85 yrs年齢 85 歳以上2
S2previous Stroke脳卒中既往2

CHADS2スコアから、「糖尿病」と「心不全」はリスクとして同定されていません。代わりに低体重と超高齢(85歳以上)、心房細動のタイプが使用されています。

その6つの危険因子のうち、「高血圧」、「年齢75〜84歳」、「BMI 18.5kg/m2未満」、「心房細動タイプの持続性または永続性」が1点となりました。また、「85歳以上」と「脳卒中既往」が2点となりました。

図のように点数が1点上がる毎に脳梗塞の年間発症率があがります。抗凝固薬を内服することで脳梗塞発症は有意に抑えられていることも示されています。

HLET-E2S2スコアを計算してみましょう

HLET-E2S2スコアは何点以上で抗凝固薬による脳梗塞予防と出血リスクのバランスがどれるのかは、まだデータがありません。

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