不整脈のカテーテル治療:アブレーションについて

カテーテルアブレーション(以後、アブレーション治療)は頻脈性不整脈に対する低侵襲治療です。

不整脈に対するアブレーション治療は広く行われるようになってきました。ここではアブレーション治療について知っておいてもらいたいことを解説します。

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アブレーション治療とは?

いわゆるカテーテル治療の一つです。胸を開けて心臓を直接治療するわけではありません。

足の付け根や首の静脈(または動脈)から、血管を通って心臓にカテーテルを挿入します。

カテーテルを挿入したところに小さな傷ができますが、後で目立たなくなります。

アブレーション治療では、不整脈のきっかけとなる電気信号や不整脈が持続する原因となる場所に対して、熱エネルギーまたは冷凍エネルギーを使用して「やけど」を作成(アブレーション)します。

やけどを作成する場所は、不整脈の原因に関与する場所に限られており、後で心臓の機能に支障が出ないように工夫されます。

全国で実施されているアブレーション治療は、年々増加しており年間10万人となっております(循環器疾患診療実態調査 JROADより)。治療されている不整脈の大半は「心房細動」です。

アブレーション治療の効果は?

アブレーション治療の目的は不整脈の再発を防ぐことです。成功率は80〜95%程度です。

それぞれの不整脈によってアブレーション治療を終える基準(エンドポイント)が設定されており、エンドポイントを達成できれば再発が少ないと言えます。

治療した後に再発しなかったら成功とした場合、(不整脈の種類によりますが)成功率は80〜95%程度です。

アブレーション治療により期待される効果

患者さんの状態によりますが、以下のような効果が期待されます。

  • 動悸などの症状がなくなれば、生活の質が改善します
  • アブレーション治療により、不整脈を抑えるためのくすり(抗不整脈薬など)を止めることが期待されます
  • 不整脈よる心機能低下や命に関わる状況から、逃れられる可能性があります

アブレーション治療の対象は?

アブレーション治療は頻脈性不整脈のほとんどが対象となります。

最近では、不整脈の第一選択治療としてアブレーション治療が薦められるようになってきています。

以下のような状況の方は、アブレーションによる治療がおすすめです。

アブレーション治療が薦められる状況
  • 抗不整脈薬による治療が無効な場合
  • 抗不整脈薬が強い副作用で使用できない場合
  • アブレーションによる治療成功率が高いことがわかっている不整脈
  • 不整脈により重篤な状況に陥る可能性がある場合

各不整脈のアブレーションについてはこちら

アブレーション治療の合併症

アブレーションで大きな合併症が起こる可能性は1%前後です。

心臓の中にカテーテルを進めてヤケドをつくる治療法であり、危険なイメージがあるかもしれません。ただし、ヤケドを作る範囲はできるだけ狭くなるように工夫されており、心臓の働きに影響しないように考慮されています。

一方で、どんな治療にもあてはまりますが一定の確率で合併症が起こることがあります。術者はその確率を下げるように努力します。

アブレーション治療で起こりうる合併症

アブレーション治療で起こりうる合併症を示します。頻度はわずかです。発生した際はしっかりと対応していきます。

  • 穿刺部の血腫・しこり
  • 心タンポナーデ
  • 他の不整脈の出現
  • 血栓塞栓症
  • 下肢静脈血栓症
  • 心外膜炎
  • 血管合併症
  • 造影剤による副作用
  • 放射線による障害
  • 空気塞栓
  • 冠動脈狭窄
  • 心臓の弁損傷

参考資料:日本循環器学会 / 日本不整脈心電学会合同ガイドライン 2018 年改訂版 不整脈非薬物治療ガイドライン [https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/07/JCS2018_kurita_nogami.pdf]

アブレーション治療の入院の流れは?

外来受診から治療、治療後の流れは以下のようになります。

STEP
外来受診

治療の希望や方針について話し合います
術前の検査として、CT(造影を含む)検査や経食道心エコー検査などが追加されることがあります。

STEP
患者さんやご家族への治療内容の説明・同意取得

不整脈に対する治療の選択肢をご提案します。それぞれの治療のメリット、デメリットをご理解の上、方針を決めていきます。
カテーテルアブレーションを選択されたら、治療内容について詳しく説明します。特に治療による効果や起こりうる合併症について説明し、納得した上で同意をしていただきます。

STEP
治療

治療にかかる時間は、不整脈の種類により異なります。1〜5時間程度で行われることが多いです。
治療中は局所麻酔と静脈麻酔(鎮痛薬と鎮静薬)を適宜使用し、できるだけ痛みを感じない状態で行われます。

STEP
退院後

通常、重い荷物を持ち上げる仕事や息が上がるような活動は、治療から1週間程度は控えてもらいます。治療内容によっては安静の期間が延長されることもありますので、主治医に確認してください。

退院後は、かかりつけで引き続き治療をおこなっていただきます。不整脈の再発や合併症についての経過は、治療した病院の外来を何度か受診して観察します。

治療の時間や退院後の管理などは、それぞれの状況に応じて変化することがあります。

アブレーション治療の費用は?

カテーテルアブレーションは高額医療の対象となってます。年齢や所得に応じて支払う費用が変わります。月をまたがない場合のおおよその入院費用は次のようになります。詳細は治療を受ける施設にお問い合わせください。

70歳未満

スクロールできます
区分通常の健康保険高額療養費現物給付
制度利用の場合
年収約1,160万円〜の方
健保/標準報酬月額83万円以上
国保/年間所得(※)901万円超
約60〜80万円
(3割負担)
約28万円
年収約770〜1,160万円の方
健保/標準報酬月額53万円以上83万円未満
国保/年間所得600万円超901万円以下
約60〜80万円
(3割負担)
約20万円
年収約370〜770万円の方
健保/標準報酬月額28万円以上53万円未満
国保/年間所得210万円超600万円以下
約60〜80万円
(3割負担)
約10万円
年収〜約370万円の方
健保:標準報酬月額28万円未満
国保:年間所得210万円以下
約60〜80万円
(3割負担)
約5.8万円
住民税非課税の方約60〜80万円
(3割負担)
約3.5万円

70歳以上

スクロールできます
区分通常の健康保険高額療養費現物給付
制度利用の場合
現役 III課税所得690万円以上の方約28万円
(3割負担)
約28万円
現役 II課税所得380万円以上の方約28万円
(3割負担)
約20万円
現役 I課税所得145万円以上の方約28万円
(3割負担)
約10万円
一般課税所得145万円未満の方57,600円
区分 I住民税非課税の方57,600円
(2割・1割負担)
24,600円
区分 II住民税非課税の方57,600円
(2割・1割負担)
15,000円

食事料金、個室料金などの自費分は含まれてません

生命保険会社へ手術給付金申請

生命保険に加入されている方は、入院や手術に対する給付を受けることができます。

保険会社によって手術給付金の対象手術が異なる場合がありますので、ご加入の保険会社にご確認ください。

正式名称経皮的カテーテル心筋焼灼術
コードK 595
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