高LDLコレステロール血症の治療

LDLコレステロールが高くても症状はありませんが、時間をかけて動脈硬化は進行し突然大きな病気が発症するリスクがあります。将来、健康な状態を維持できるように予防に努めましょう。

脂質異常症と診断されたら将来のために治療が行われます。治療の基本は、ライフスタイルの改善と薬物治療です。

コンテンツ

LDLコレステロールの治療の目標

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版(日本動脈硬化学会)を参考にLDLコレステロールの治療目標を説明します。

LDLコレステロールの治療目標は状況によって違いがあります。動脈硬化がすでに進行していたり、他の病気が併存しているとLDLコレステロールはできるだけ低くするように治療されます。

逆に他に問題がない場合は、比較的ゆるめに治療されます。

心筋梗塞や狭心症になったことがある場合

冠動脈疾患があれば、すでに動脈硬化が進行した状態です。心筋梗塞などを再発する可能性が高い状態です。これ以上、動脈硬化が進まないように厳格にコントロールする必要があります。

心筋梗塞や狭心症になったことがある場合の管理目標

LDLコレステロール 100 mg/dl 未満

さらに厳格にする場合、70 mg/dl 未満

さらに厳格に:家族性高コレステロール血症や急性冠症候群(急性心筋梗塞など)の時にはさらに厳しくコントロールされます。

強く動脈硬化に関連する他の病気がある場合

以下の項目があると強く動脈硬化を進行させたり、進行していることを示唆しています。心筋梗塞にならないようにしっかりとコントロールする必要があります。

  • 糖尿病
  • 慢性腎臓病(CKD)
  • 脳梗塞(心原性ではない)
  • 末梢動脈疾患
強く動脈硬化に関連する他の病気がある場合の管理目標

LDLコレステロール 120 mg/dl 未満

動脈硬化に注意すべき状況にある場合

以下の項目があると動脈硬化が進みやすい状況です。

  • 喫煙
  • 高血圧
  • 低HDL血症
  • 耐糖能異常
  • 近親者の比較的若い年齢での冠動脈疾患の家族歴
動脈硬化に注意すべき状況にある場合の管理目標

ひとつでも当てはまる場合、

LDLコレステロール 120(or 140) mg/dl 未満

他に動脈硬化リスクがない場合の管理目標

以上のような動脈硬化リスクがLDLコレステロール以外にない場合の管理目標は以下のようになります。年齢で分けられます。

他に動脈硬化リスクがない場合の管理目標

LDLコレステロール 160(60歳未満)mg/dl 未満

or 140(60歳以上)mg/dl 未満

まずは、ライフスタイルを見直して改善しよう

LDLコレステロールを意識した食事とは

LDLコレステロールを下げる食事を始めるには、多く取った方が良い食品と減らした方が良い食品を知り、賢く選択する必要があります。

LDLコレステロールを下げる食事のポイント
  • 肉をやめて、魚を食べよう
  • お菓子やデザートを習慣的に食べない
  • 野菜を多く食べる
  • 全粒粉や玄米を選択する

食べた方が良い食品

LDLコレステロールを下げる可能性がある食品は以下のようになります。

  • 全粒粉や玄米など:短鎖脂肪酸を増やす(LDLコレステロールが下がる効果がある)
  • サバやサーモンなど:多価不飽和脂肪酸が多い食品
  • ナッツ類
  • 果物や野菜

食べる量を減らした方が良い食品

LDLコレステロールが上昇する食品を減らしましょう。

  • 飽和脂肪酸が多い食品:肉の脂身、乳製品、ココナッツオイルやパーム油
  • トランス脂肪酸:スナックやデザートなど

ライフスタイルの見直し(食事以外)

脂質異常症の多くは生活習慣が偏ることで発生します。薬物治療と並行してライフスタイルを改善することが重要です。

  • 運動習慣:適度な身体活動はHDLコレステロールを増やします。
  • たばこをやめる:禁煙するとHDLコレステロールが増えます。喫煙は血管にも作用することで動脈硬化の進行を早めます。
  • 肥満を解消する:肥満はコレステロール代謝に悪い影響を与えます。
  • アルコールを減らす・やめる:アルコールはコレステロールを上げる作用があるため、やめることで低下が期待されます。
  • ストレスを管理する

高LDLコレステロール血症の薬物治療

食事やライフスタイルの見直しをしてもコレステロールの低下が不十分な場合は、LDLコレステロールを下げる薬を服用することになります。

LDLコレステロールを下げる薬の種類

LDLコレステロールを下げる薬の選択

高LDLコレステロール血症に対する薬物治療の第一選択薬は「スタチン」です。

スタチンの効果が不十分だったり、副作用で使用できないときに他の薬剤を併用したり変更したりします。

それでも目標の値が達成できない場合に、PCSK9阻害薬が使用されます。

内服のタイミング

薬は決められたタイミングでの服用を続けることで、効果を最大限得ることができます。1日のどのタイミングで服用しても問題ない薬は、飲み忘れしにくいタイミングで服用しましょう。

朝食をきちんと食べる習慣の方は、朝食後に服用することが多いです。「夜はアルコールを飲むから」「朝ごはん食べないし」などいろいろな方がいます。

飲み忘れないタイミングで服用する習慣を作りましょう。

定期的に血液検査でチェックしよう

LDLコレステロールの治療が開始となったことで満足してはいけません。きちんと目標に到達しているか確認しましょう。

ライフスタイルが安定し、血液検査の結果も安定してくれば血液検査の間隔を空けることができます。また、人によっては内服が不要になるくらいライフスタイルの見直しでLDLコレステロールが下がることもあります。

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