SGLT2阻害薬について：特徴と注意点

2023年11月8日2024年5月22日

特徴

尿からのブドウ糖（グルコース）排泄を増やすことで、血液中のグルコース濃度（血糖値）を下げる薬です。作用機序から単剤では低血糖は起きにくいので使いやすい薬だと言えます。

心不全の治療薬としても使われます。慢性腎臓病の進行予防の効果もあります。

腎臓は血液中に含まれる老廃物を尿として体の外へ排出させる重要な臓器です。尿の中に老廃物をこし出す過程の中で、大事な成分は血液に戻す必要があります。

グルコースも重要なエネルギーであり、尿に出て行かないように血液中の引き戻されます。この時にSGLT2という酵素が働きます。

通常、血糖値が高い状態になると血液中に引き戻す限界を超え、尿中にグルコースが出ていきます。これが尿糖です。尿糖が検出される時は、血糖値が過剰に上昇していることが想定されます。

SGLT2阻害薬はグルコースを引き戻す酵素（SGLT2）を阻害するために、尿糖が増えます。その結果で血糖値が下がります。

当然、尿検査をすると尿糖が多く検出されるようになります。

グルコースと一緒に水も排出されるため尿量が増えます。血糖値が高くなくても尿糖が排出されますが、単剤では低血糖になるリスクは低いです。

低血糖：単剤では低血糖は起きにくいですが、SU薬などと併用すると低血糖を起こす可能性があります。
尿路・性器感染症：尿糖が増えると、尿路や性器の周囲で菌が住みやすい環境になります。膀胱炎や膣炎などが起きやすくなります。清潔な状態を保ちましょう。
脱水症状：尿量が増えるため水分が減ってしまい脱水状態になる可能性があります。適度な水分補給を行い、喉の渇きや倦怠感を自覚したら、水分を多めに摂取しましょう。
正常血糖ケトアシドーシス^※：ケトン体が増えて血液は酸性に傾き高度な脱水状態になります。悪心・嘔吐、食欲低下、腹痛、口渇、呼吸困難、意識障害などが見られます。血中ケトンの上昇を確認し、緊急で治療が必要になります。

※ 正常血糖ケトアシドーシス

通常の糖尿病によるケトアシドーシスは、インスリンが少ないことでグルコースが利用されず（血糖値が高いまま）に、グルコースの代わりにエネルギー源として脂肪酸が代謝されケトン体が増えることで発生します。

SGLT2阻害薬を使用している患者さんで、食事が取れない状態が続くと体内のグルコースが不足します。それでも尿へのグルコース排泄は続くことで、代わりに脂肪酸が代謝されケトン体が増えることで血糖値は高くないのにケトアシドーシスになることがあります。

緊急で治療（グルコース、インスリンの補充と脱水の補正）が必要な状況になります。

正常血糖ケトアシドーシスを予防するために、食事が取らない状態が続いたり、発熱や嘔吐下痢が続く場合はSGLT2阻害薬の内服を一時的に止めることも必要になります。また、過度な糖質制限ダイエットもリスクの一つになります。

他の糖尿病薬やインスリンを使用しているときは、低血糖の発生に注意しましょう。

尿糖が増え、尿路・性器に細菌が増えやすく感染症を起こしやすくなっています。きちんと清潔な状態を保つようにしましょう。

脱水や正常血糖ケトアシドーシスが起こる可能性がありますので、水分は十分に摂取しましょう。ただし、心不全の患者さんは適切な量を主治医に確認しましょう。倦怠感や食欲不振、意識障害などが出た場合は速やかに主治医に相談してください。

SGLT2阻害薬はインスリンを介せずに血糖値を下げることから脂肪量や筋肉量の減少が指摘されている。筋肉量がすでに低下している高齢者などでは、さらなる低下が懸念される。

筋肉量を落とさないようにするには、筋肉を刺激することが大事なので適度な運動（有酸素運動と筋力トレーニング）を同時に指導することが勧められています。

一般名	商品名	特徴	用法・用量
イプラグリフロジン	スーグラ	肝機能低下に対して25mgの低規格あり DPP-4阻害薬との合剤あり１型糖尿病に適応	1日1回 50mg（100mgまで）
ルセオグリフロジン	ルセフィ	口腔内で溶けるフィルム製剤がある	1日1回 2.5mg（5mgまで）
ダパグリフロジン	フォシーガ	慢性心不全に適応あり慢性腎臓病に適応あり	1日1回 5mg（10mgまで）
トホグリフロジン	デベルザ		1日1回 20mg
カナグリフロジン	カナグル	DPP-4阻害薬との合剤あり糖尿病合併の慢性腎臓病に適応あり	1日1回 100mg
エンパグリフロジン	ジャディアンス	DPP-4阻害薬との合剤あり慢性心不全に適応あり慢性腎臓病に適応追加	1日1回 10mg（25mgまで）