ビグアナイド薬について:特徴と注意点

特徴

いくつかの機序で血糖値上昇を抑えます。薬の影響での体重増加が少なく、作用機序から単剤では低血糖は起きにくいので使いやすい薬だと言えます。

最初に選択されることが多い薬です。特に肥満(BMI 25kg/m2以上)の方によく使われますが、肥満がなくても効果があります。

血糖値を下げる作用

肝臓での糖新生を抑える

肝臓ではグルコース以外の材料を使ってグルコースを生成する糖新生という働きがあります。ビグアナイド薬は肝臓での糖新生を抑えることで血糖値の上昇を抑えます。

インスリン感受性を改善させる

筋肉や脂肪組織に作用しインスリンの効き具合(インスリン感受性)を改善し、グルコースが取り込まれやすくなります。それにより血液中のグルコース(血糖値)が上がりにくくなります。

腸で便へのグルコース分泌を促す

ビグアナイド薬は腸において作用し、腸からのグルコース吸収を減らしたり、便へのグルコース分泌を促すことで血糖値の上昇を抑えるようです。

他のもいろいろな作用が報告されている。

※ 肝臓での糖新生とは

肝臓にはグルコースを増やす機能があります。それが糖新生グリコーゲン分解です。

血液中のグルコースが過剰になると、肝臓でグルコースはグリコーゲンへ置換され蓄えられます。血糖値が下がると、蓄えられたグリコーゲンが分解されてグルコースになります。これがグリコーゲン分解です。

そして、肝臓ではグルコース以外の物質からグルコースを作ることができます。これが糖新生です。ピルビン酸、乳酸、アミノ酸、グリセロール、プロピオン酸などが使用されます。グルカゴン分泌に反応して糖新生が始まります。糖新生の際には筋肉が分解され、筋肉量が減少する可能性があります。

副作用

  • 低血糖:単剤では低血糖は起きにくいですが、SU薬などと併用すると低血糖を起こす可能性があります。
  • 乳酸アシドーシス:ごくに、薬の作用により乳酸が分解されずに過剰な状態になる可能性があります。。症状としては、吐き気、腹痛、脱水、低血圧などがあり、意識がなくなることもあります。死亡例の報告もあります。

ビグアナイド薬による乳酸アシドーシス

通常は肝臓で利用される尿酸がビグアナイド薬の作用にて分解されずに過剰な状態になると、血液のpHが酸性へ傾きます。

発症頻度はごく稀ですが、発症すると死亡率は低くありません。緊急で治療(pHの補正や症状に対する対症療法)が必要な状況になります。

【特に注意が必要な状況】

  • 腎機能障害
  • 脱水、体調不良、アルコール摂取
  • 循環不全の可能性(心機能低下、血圧低下、手術など)
  • 高齢者

注意事項

他の糖尿病薬やインスリンを使用しているときは、低血糖の発生に注意しましょう。

吐き気、腹痛、下痢、倦怠感などの症状がでたら、乳酸アシドーシスが起こり始めている可能性があります。かかりつけ医に相談しましょう。

ビグアナイド薬(メトホルミン)の適正使用の指針

ビグアナイド薬は、多くの作用があり糖尿病の治療薬として広く使用されています。ただし、極めて稀に発生する可能性がある尿酸アシドーシスは危険な副作用です。

乳酸アシドーシスについては、多くの報告があり発生リスクが高い人、高い状況を避けるように指針が示されています。

以下はビグアナイド薬のメトホルミンの適正使用についての注意点です。

腎機能障害(透析患者さんも)

メトホルミンは高度腎機能低下(eGFRで30 mL/分/173m2未満)では、服用が禁止されています。また、eGFR 30~45では慎重に処方することが勧められています。

eGFR 30~60の中等度の腎機能低下があると、用量の調整が行われます。さらに、造影剤を使用した検査・治療が行われる際には、造影剤使用から48時間は内服を休薬することが勧められています。

つまり、(一過性でも)腎臓の機能が低下していると乳酸アシドーシスが起きやすいことが問題となります。

【腎機能が低下するような状況】

  • 著明な脱水状態
  • 血圧が急に下がった状態(いわゆるショック)
  • 心不全による心ポンプ不全
  • 重症の感染症
  • 造影剤使用時

また、以下のような内服薬も腎臓の血流を低下させることがあるので、注意が必要です。

【腎臓の血流が落ちる可能性がある薬】

  • 一部の降圧薬(ACE阻害薬、ARBなど)
  • 利尿剤
  • 痛み止め・解熱剤(NSAIDs)
脱水、シックデイ、過度のアルコール

脱水に至るよう状況(水分摂取不足、熱中症、嘔吐や下痢など)では、乳酸アシドーシスのリスクが上がります。このような状況では、内服を中止しましょう。

いわゆるシックデイの時は脱水になりやすい状況です。日頃から制限がなければ水分を適度に摂取しましょう。

アルコールを過量に摂取する傾向がある方には、この薬は向いていません。ただし、アルコール自体は体に有害であることがわかっていますので、アルコールを制限する生活を選びましょう。

心血管・肺機能障害、手術の前後、肝障害など

心臓や肺の機能が高度に低下していると、腎臓の機能に影響します。また、大きめの手術でも全身の循環が落ちることがあります。そのような状況ではビグアナイド薬は避けます。

肝障害があると処方について慎重に検討されます。

高齢者

高齢者は潜在的に腎臓や肝臓の機能が落ちていることがあります。

高齢者ではビクアナイドの処方は慎重に検討されます。

ビグアナイド薬の一覧

一般名商品名特徴用法・用量
メトホルミンメトグルコDPP-4阻害薬との合剤あり1日 500mgを2、3回に分けて開始(2,250mgまで)
メトホルミングリコラン1日 500mgを2、3回に分けて開始(750mgまで)
SGLT2阻害薬 一覧

メトグルコにはDPP-4阻害薬との合剤がいくつもあります。

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