心不全について:主要な症状と原因を知ろう

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心不全とは

心臓は全身に血液を送るポンプとして機能しています。

そのポンプ機能のおかげで、全身のそれぞれの臓器に血液を介して酸素や栄養を送り届けることができます。さらに二酸化炭素や老廃物をそれぞれ肺や腎臓・肝臓などに送ることで体外に排出する手助けをします。

心不全とは心臓のポンプ機能が低下した状態のことです。いろいろな原因で心不全になることがあります。

心不全では、心臓が悪いことで息切れやむくみといった症状が発生します。心不全は一度発症すると、だんだん悪くなり、生命を縮めてしまいます

心不全の症状

心不全の症状には、ポンプ機能が低下することによる症状体に水が溜まること(うっ血)による症状があります。さらにうっ血の症状として、肺にうっ血したことで起こる症状と体にうっ血しておこる症状があります。

うっ血による症状

心不全になると水分が体に溜まりやすくなります。肺や体にうっ血することで症状が出ます。

肺がうっ血すると、咳が出たり、動いた時に息苦しくなります。さらに進行すると、臥位になると苦しくなったり、苦しくて夜目が覚めたりします

体がうっ血すると、体重が増え、お腹が張ったり、足や体、顔がむくんだりします。むくむことを浮腫(ふしゅ)といいます。

ポンプ機能が低下して生じる症状

脳は多くの酸素が必要であり、酸素の減少に敏感です。ポンプの機能が落ちると、意識が低下したりめまいがしたりします。

全身の組織に血液の供給が減ることで、疲れやすく感じたり、手足が冷えたりします。腎臓への血流が落ちると尿が減り、うっ血の症状へと繋がります。

心不全症状の強さを表すNYHA分類

どの症状が強くでるか、心臓の状態や人によって異なります。心不全によりう症状の程度ではNYHAクラスで表されることが一般的です。

ニューヨーク心臓協会(NYHA;New York Heart Association)による分類】

クラス症状
クラス1心不全の症状なし
クラス2通常の身体活動(坂道や階段をのぼる)にて息切れ、動悸、胸痛、疲労感を認める
クラス3通常以下の身体活動(平地を歩くなど)で息切れ、動悸、胸痛、疲労感を認めるが、安静時は症状がない
クラス4どんな身体活動でも息切れ、動悸、胸痛、疲労感がある。安静にしていても症状がある

NYHAは、ニーハとかエヌワイエイチエーと呼ばれます。数字が大きいほど症状が強いことを示します。

クラス2では、負荷をかけた動作で心不全症状が出ます。クラス3では、軽い動作でも症状が出ます。クラス4になると、非常に軽い動作もきつくなり、安静でも症状がでます。

心不全の原因は?

心不全にいたる原因には、心筋の異常、血行動態の異常、不整脈があります。単一の原因で心不全にいたることも、複数の原因が関与することもあります。

【心筋の異常】

  • 虚血性心疾患
  • 心筋症
  • 心毒性物質
  • 感染症(心筋炎)
  • 免疫疾患
  • 妊娠(周産期心筋症)
  • 浸潤性疾患
  • 内分泌・代謝疾患 など

【血行動態の異常】

  • 高血圧
  • 弁膜症・心臓構造異常
  • 心外膜の異常
  • 心内膜の異常
  • 高心拍出性心不全
  • 体液量増加

【不整脈】

心不全の診断は?

心不全の診断は、症状と検査所見を合わせて行います。症状だけでは心不全による症状かその他の疾患による症状かは判断できません。

心不全の検査

心不全を診断するために以下のような検査を組み合わせます。すべての検査を行うわけではありますせんが、心臓の病気を確定するために詳しい検査を組み合わせます。

まず行われる検査

血液検査

心臓に負担がかかるとBNP(もしくはNT-proBNP)という酵素が上昇します。心不全で増加します。

胸部エックス線

心臓の拡大、肺のうっ血、胸水(肺に水が溜まった状態)などがあると心不全の可能性があります。

心電図

不整脈の検出や心筋の異常などを知ることができます。

心エコー検査

心臓のサイズ、収縮機能や拡張機能、弁膜症、血流の確認など非常に多くの情報を得ることができます。

左室駆出率は収縮機能を表す重要な指標です。

追加で検討される検査

  • 心臓MRI検査:心臓の機能や心室の障害度を知ることができます。
  • 心臓CT:造影剤を使用して、冠動脈の血流を確認します。
  • 血管造影:心臓に血液を供給する血管(冠動脈)の血流を確認することができます。狭心症や心筋梗塞を疑う場合に行います。
  • 心筋生検:心室の筋肉の一部を器具を使って採取します。顕微鏡で心筋の状態を確認し、心臓の病気を診断します。
  • 心筋シンチグラフィ:心筋の血流や状態を確認する検査です。

収縮不全と拡張不全

ポンプ機能を表す際に、心臓(左心室)が縮む力(収縮機能)と広がる力(拡張機能)を指標にします。どちらの機能が低下しても心不全は起きやすくなります。収縮機能は左室駆出率で表します

収縮不全心室の縮む力が落ちてポンプ機能が低下した状態。
左室駆出率が低下している。
拡張不全心室が硬く、広がりにくくなることで、血液を貯める量が減り押し出せる血液の量が減った状態.。
左室駆出率は保たれているしている。

収縮不全と拡張不全のどちらも有する患者さんもいます

左室駆出率による分類

収縮機能を示す左室駆出率とは

左室駆出率は、左心室が最も広がった状態の容積から最も収縮した状態の容積への変化率が何パーセントなのかが表現されます。

LVEF(%)=(左室拡張末期容積 – 左室収縮末期容積)/ 左室拡張末期容積

収縮機能が良ければEFの値は高いことになります。心エコーやMRI、心筋シンチ、血管造影などいろいろな装置で測定することができます。

心不全で検査をした時の左室駆出率や治療の過程での左室駆出率の変化にて、以下のように分類されます。

左室駆出率分類
40%未満HFrEF:左室駆出率が低下した心不全
heart failure with reduced EF
40-50%HFmrEF:左室駆出率が軽度低下した心不全
heart failure with mildy-reduced ejection fraction
50%以上HFpEF:左室駆出率が保たれた心不全
heart failure with preserved EF
左室駆出率の変化による分類
改善したHFrecEF
heart failure with recovered EF
悪化したHFworEF
heart failure with worsened EF
変化しないHFuncEF
heart failure with unchanged EF

心不全を放っておくとどうなる?

心不全の進展ステージ

心不全は悪化と回復を繰り返しながら、徐々に進行する病気です。最後は安静にしていても心不全症状を強く自覚するようになります。心不全の進行度はステージで表されます。

心不全のステージ分類:AHA/ACC

ステージ
ステージA高血圧、糖尿病、肥満などので心不全にいたるリスクを有しているが、心臓の病気や心不全がない
ステージB心臓の病気はあるが、心不全の症状がない
ステージC心臓の病気があり、心不全の症状がある;ここからが心不全とされる
ステージD治療をしても日常的な身体活動が制限される状態が持続した状態・心臓に対する薬が効きにくくなっていく末期的な状態・苦痛が強い場合は苦痛をとる治療(緩和ケア)を考慮します。

心不全が進行する経過

急性に悪化し強い症状が出て、病院で治療することで症状が改善するかもしれませんが、そのたびに心臓のダメージは少しずつでも蓄積していきます。

心不全は進行する病気と言われる所以です。心不全が進行していく様子を表したグラフを示します。

急性に症状が悪化するような状況が繰り返されることで、心臓は回復する力が落ちていくことにつながります。前回は病院で点滴したらすぐに症状は取れたかもしれませんが、次はなかなか良くならないかもしれません。

心不全を放置すると、症状が強くなり、体調の良い時間は短くなり、寿命が短くなります。

この経過をできるだけ先に伸ばすためには、きちんと治療を受けて自己管理を行う必要があります。

心不全のステージを進めないためにしっかりと治療を受ける必要があります。

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