心房細動アブレーションを受けた後に、いくつか注意していただきたいことがありますのでご確認ください。
退院直後に気を付けることは?
心房細動アブレーション直後(1ヶ月程度)は、以下のような項目に気を付けていただきます。退院後に気を付ける内容ついては、施設によって異なります。治療を受けた主治医に確認しましょう。
食事と飲酒
- アルコールや刺激の強い食事を避ける
- 過食を避ける(腹八分で)
1ヶ月は上記のことに注意してください。治療後に起こりうる合併症(左房食道ろう)を避けるためです。
生活活動と労働
治療から1週間程度は、重い荷物を持ち上げる仕事や息が上がるような活動を控えてもらいます。
治療内容によっては安静の期間が延長されることもありますので、主治医に確認してください。
ライフスタイルの見直し
心房細動の発生には、ライフスタイルが関わっていることが多いです。これを機会にライフスタイルを見直し、健康寿命の延伸のため努力しましょう!
退院後に症状があったら?
心房細動アブレーション後に起こりうる自覚症状には以下の様なものがあります。
- 動悸・脈不整
- 胸痛や喀血
- 穿刺部のしこり
動悸・脈不整
退院後に動悸症状を自覚した際の注意点を説明します。症状が軽い場合は、そのまま経過をみていただいても構いません。もし、動悸を自覚したときに飲むクスリをもらっている場合は、それを試しましょう。
症状が強い動悸が続いている、立っているとふらふらするといった症状があれば、すぐにかかりつけの医療機関もしくはアブレーションを受けた医療機関に連絡しましょう
心房細動アブレーション後には、一時的に心房性不整脈が出現する時期があります。その時期を過ぎる頃に不整脈の頻度が減少し出なくなることもよくあります。
一般的には治療から3ヶ月間は観察期間(または ブラインディング期間)としており、心房細動を認めても経過を見る方針になります。
ただし、対応が必要な不整脈(非常に脈が速い、症状が強いなど)の場合は、薬物療法の強化、対外式除細動や再度のアブレーション治療を選択することもあります。
胸痛
心房細動アブレーション直後は、心外膜炎が合併することがあり胸痛を自覚することはしばしばあります。しかし、退院後しばらくして胸痛が出る場合はそれ以外の合併症が発生している可能性があります。左房食道ろうや肺静脈閉塞が考えれます。
左房食道ろうであれば、胸痛以外に吐血や意識障害などがあります。重症の合併症であり、救命のため緊急で対応する必要があります。
肺静脈閉塞であれば、胸痛以外の症状として息切れや喀血などがあります。CT検査にて診断し、閉塞した肺静脈を広げる治療を検討します。
胸痛を含めこれまで自覚したことのない症状があれば、すぐにかかりつけ医療機関か、治療を受けた医療機関にご相談ください
穿刺のしこり
足の付け根などの穿刺をしたところに「しこり」のようなものができることがあります。
シースを挿入した時の傷が修復される際にできるもので、次第に小さくなりますので心配は不要です。
退院後に薬は変わりますか?
心房細動アブレーションを受けたら、以下の内服について確認しましょう。
- 抗凝固薬
- 不整脈を抑える薬
- 胃酸を抑える薬
抗凝固薬
心房細動アブレーション後の抗凝固薬の継続については確認が必要です。
心房細動による脳梗塞予防で処方されている抗凝固薬は、アブレーション治療から3ヶ月継続することが勧められています。3ヶ月が経過した時点で、継続するか中止可能かを判断します。
3ヶ月以降の抗凝固薬 | 判断材料 | 判断理由 |
---|---|---|
中止可能 | CHADS2スコア 0点 他のリスク因子もない | もし心房細動が再発しても脳梗塞のリスクが低いから |
検討して判断 | 脳梗塞のリスクが多少ある CHADS2スコア 1点 もしくは他のリスク因子がある | 再発がなければ脳梗塞のリスクは低い 検脈やデバイスを使った検査で毎日の脈の状態を把握 不整がなければ、中止可能 |
基本的に継続 | 脳梗塞の既往がある 脳梗塞のリスクが高い(CHADS2スコアが2点以上) | 再発した時に脳梗塞のリスクが高い 心房細動がなくても脳梗塞になるという報告もある |
抗凝固薬は3ヶ月は必ず内服。3ヶ月目以降は、心臓の状況や併存疾患、年齢などで継続が必要か判断。
不整脈を抑える薬(抗不整脈薬)
心房細動アブレーション後は、心房性不整脈がしばらく出現することがあります。治療後の不整脈を抑えるために、抗不整脈薬を内服する場合があります。主治医の判断になります。
胃酸を抑える薬
心房細動アブレーションの注意すべき合併症に、左房食道ろうがあります。この合併症は、治療後の徐々に増悪していきます。その原因の一つが胃酸だと考えられています。そのため、胃酸を抑える薬を1ヶ月間内服していただきます。
胃の外科的治療後で、胃を摘出している方は不要です。