肥大型心筋症とは-1:症状・原因

このページは、日本循環器学会 / 日本心不全学会合同ガイドライン「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」を参考に作成しております。

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肥大型心筋症とは

肥大性心筋症(Hypertrophic cardiomyopathy; HCM)は、心筋が厚くなる病気です。比較的多くの患者さんが肥大型心筋症に罹患しているという報告があります(世界的には500人に1人)。

肥大型心筋症の定義

肥大型心筋症は、画像検査(心エコー、心臓MRI検査)で肥大があり、下記の基準を満たした場合に診断されます。

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左心室の壁の厚さが15mm以上

心エコーや心臓MRI検査により測定された左心室の壁の厚さが15mm以上の「心肥大」がある。

家族で肥大型心筋症と診断されている場合は13mm以上で「心肥大あり」とされる。

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二次性心筋症を疑う所見があるか

高血圧などの心肥大につながる状態があったり、他の二次性心筋症を疑う所見がないかチェックする。詳細は別の項で説明。

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肥大型心筋症の診断

下記のいずれを満たす場合に「肥大型心筋症」と診断されます。

  1. サルコメア遺伝子変異がある
  2. サルコメア遺伝子変異はないが、他の二次性心筋症は否定されている
  3. 遺伝子検査を行なっていないが、他の二次性心筋症は否定されている

肥大型心筋症の問題点

肥大型心筋症の問題点は、いろいろな合併症を引き起こす可能性があることです。後述するような突然死、心不全、不整脈(特に心房細動)が発生する可能性があります。

ただし、肥大型心筋症と診断されても無症状のままで、合併症を併発するともなく高齢になるかたも少なくありません。

突然死にいたるリスクが高い方の特徴はある程度わかっていますので、肥大型心筋症と診断された方はリスクが高くないかを調べてもらう必要があります。

肥大型心筋症の症状

自覚症状がない人が多い

肥大型心筋症は症状がでるほど進行するまでは、自覚症状がない方が多い病気です。そのため、健康診断の心電図異常による二次検診でわかることもあります。

肥大型心筋症の自覚症状

自覚症状がある場合は、以下のような症状が挙げられます。

息切れ肥大型心筋症では、心筋が厚くなり広がりにくくなります。
歩いたり、運動した時に心臓が広がらないと血液の循環が落ちて、息切れをおこしやすくなります。
胸痛心筋が厚くなり、血液が心筋に行き渡りにくくなることが考えられます。
特に運動時に自覚します。
動悸肥大型心筋症では、心臓の鼓動を強く感じやすくなることがあります。
また、不整脈を合併しやすいため動悸がある場合は心電図などの検査を受けましょう。
めまい・失神めまいや失神は脳への血流が落ちることが原因となることがあります。
肥大型心筋症では、左心室の中が狭くなっていることで血液をうまく押し出せないことがあります。
また、不整脈(特に頻脈性不整脈)を合併しやすく、重篤な不整脈の可能性が疑われるため精査が必要です。
早めに医療機関を受診する目安

以下のような症状が数分間異常持続していれば、すぐに119または医療機関に連絡しましょう。

  • 心臓の鼓動が非常に早いまたは不規則
  • 呼吸が苦しい
  • 胸が痛い

肥大型心筋症の原因

遺伝子変異が知られている

肥大性心筋症は通常、心筋を厚くする遺伝子の変化によって引き起こされます。特にサルコメア遺伝子変異がよく知られています。

二次性心筋症の鑑別も重要

肥大型心筋症のような心臓の形態を示す心筋症があります。このような心筋症の中には、進行を遅らせるような治療が可能なものもあります。

二次性心筋症を鑑別し、介入することで予後を改善させる可能性があります。

肥大型心筋症の予後

肥大型心筋症は無症状のまま経過することも少なくありませんが、以下のような合併症が併発することがあります。

合併症がなければ、超高齢になっても症状なく経過することもあります。

肥大型心筋症の合併症が起きていないか、起きそうにないかをきちんとフォローし、適切な対応をすることで死亡率が低下することもわかっています。

肥大型心筋症の合併症

心房細動心筋が厚くなって広がりにくくなると、心房に負担がかかります。心房に負担がかかると心房細動という不整脈がでやすくなります。
心房細動の問題の一つが脳梗塞ですが、肥大型心筋症があると脳梗塞のリスクがあがることが考えられます。
また、頻脈になりやすく、心不全の原因の一つとなります。
心不全心臓が硬くなることで余裕がなくなります。血液を送り出すポンプとしての機能が落ちると心不全になります。
息が上がったり、体がむくんだりします。
突然死肥大型心筋症の方でまれに心臓突然死を起こすことがあります。
突然死のリスクについては後述。
僧帽弁疾患厚くなった心筋の影響で僧帽弁(左室から左房への逆流を防止する弁)の閉じがわるくなり、逆流が生じることがあります。
自覚症状が強くなったり、心不全や心房細動が起きやすくなります。
拡張型心筋症肥大型心筋症の方でまれに厚くなった心筋の機能が落ち、広がる力だけでなく縮むちからも低下することがあります。
左心室は拡張し、拡張型心筋症のような形態に移行します。
心不全のコントロールが難しくなります。

突然死を予測する項目

以下のような項目がある場合は、心臓突然死をきたす可能性があります。危険な不整脈を治療する植え込み型除細動器の植え込みが検討されます。

肥大型心筋症:突然死のハイリスク
  • 致死的不整脈(心室細動・心室頻拍)による心停止の既往
  • 持続性心室頻拍の既往
  • 半年以内の心臓が原因と考えられる または 原因不明の失神
  • 左心室の厚さが30mm以上
  • 突然死をした家族がいる
  • 非持続性心室頻拍(特に若い方)
  • 運動時の血圧反応異常
  • HCM Risk-SCD Calculatorでハイリスクに該当
HCM Risk-SCD Calculator

また、以下のような検査所見がある場合もリスクに含まれます。

肥大型心筋症:リスクの高い検査所見
  • 左室流出路狭窄
  • 心臓MRIにて広範囲な遅延造影
  • 拡張相肥大型心筋症
  • 心室瘤
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