高尿酸血症の治療指針

高尿酸血症は痛風やその他の合併症を発生させる可能性があります。多くはライフスタイルの問題が関係しています。高尿酸血症の治療について説明します。

日本痛風・尿酸核酸学会による『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』および『追補版』を参考にしています。

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高尿酸血症の治療指針

高尿酸血症はいわゆる生活習慣病の一つです。ライフスタイルが乱れていることを表す値です。尿酸値が高いことによる合併症(痛風など)を予防することも大事ですが、その他の生活習慣病に拡大することも懸念されます。

ガイドラインでは、下図のように方針が示されています。

尿酸値 7.0mg/dL 以上

尿酸値が7.0mg以上ある場合は、まずライフスタイルの改善が指導されます。特にプリン体が多い食事は控えるように指導されます。

さらに痛風発作(痛風関節炎)や痛風結節がある場合は、薬物を用いて尿酸値を下げる治療が行われます。できるだけ尿酸値を下げて、組織に溜まっている尿酸の結晶を溶かすことを期待します。

痛風発作を繰り返す場合の治療目標

痛風関節炎を繰り返す場合は、ライフスタイルを見直し薬物治療を併用して、

血清 尿酸値 6.0 mg/dl以下

になるように治療されます。

尿酸値 8.0mg/dL 以上

尿酸値が8.0mg/dLを超えてくると、尿酸の結晶が作られやすくなります。将来的な痛風発作のリスクがあがります。さらに、他の生活習慣病(慢性腎臓病、高血圧、メタボ、MASLDなど)が発生するリスクが高くなっていきます。

ライフスタイルを大きく見直す必要があります。適切な指導を受けましょう。

他の併存疾患(腎障害、尿路結石、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボなど)がある場合は、それらの疾病の進行を予防するためにも尿酸を下げる薬物治療が追加されます。

尿酸値 9.0mg/dL 以上

尿酸値が9.0mg/d以上になった場合は、ライフスタイルの見直しと薬物療法が併用されます。

基本はライフスタイルの見直し

高尿酸血症になりやすい食事を控える

尿酸値が上がる理由の一つが、尿酸が生成される原因となるプリン体の取りすぎが挙げられます。プリン体を多く含む食事をできるだけ控えましょう。

高尿酸血症になりやすい食事
  • 果糖を多く含む飲み物やスイーツ:果物、清涼飲料水
  • アルコール(ビール以外も)
  • 干している系
  • ある種の海産物
  • 内蔵系
  • 赤肉(牛肉や豚肉など)

それぞれの食品の詳細については下記をご覧ください。

果糖を多く含む飲み物やスイーツ

果糖(フルクトース)を分解する過程で、尿酸値が高くなることもわかっています。

果糖はフルーツに含まれており、フルーツの取りすぎに注意しましょう。また、果糖は甘みが強く、多くの清涼飲料に使われています。

果糖は腸で吸収された後、肝臓で代謝され中性脂肪などに変換され、余った分が脂肪として蓄積されます。果糖は体重増加や肥満に繋がりやすく、脂肪肝にも関係しています。

アルコール

アルコールを分解する過程で尿酸値が高くなると言われています。さらにアルコールは腎臓で尿酸値を排泄しにくくする悪影響もあります。

尿酸値はビールとの関わりがよく指摘されますが、アルコールを摂取すること自体で尿酸値は上がります。当然、プリン体の多いビールを飲むとさらに上がりやすくなるでしょう。

アルコールはできるだけ控え、特にプリン体の多い食品と一緒に摂取することは控えましょう。

干している系

魚の干物にはけっこう多めのプリン体が含まれます。習慣的に食べるのは控えた方が良いでしょう。

また、干し椎茸にもプリン体が多く含まれます。

ある種の海産物

白子やあんこうの肝にプリン体が多く含まれます。カツオやマグロにも多く含まれます。エビ系・イカ系も比較的多く含まれます。

明太子やたらこなどはやや多めに含まれますので、食べる量に注意しましょう。スジコやカズノコはプリン体少なめです。

内蔵系

レバー、心臓、腎臓などはプリン体が多く含まれます。

赤肉(牛肉や豚肉など)

牛肉、豚肉などにもプリン体は多く含まれます。

食事以外のライフスタイル

痛風・高尿酸血症はいわゆる生活習慣病のひとつです。

つまり、生活習慣(ライフスタイル)も合わせて見直す必要があります。ライフスタイルを見直すことは、痛風発作を予防するだけでなく、他の生活習慣病の予防・治療にも繋がります。

適度な運動を!

運動習慣は生活習慣病の予防に役立ちます。特に有酸素運動が勧められます。できれば1週間に150分以上行いましょう。

肥満を解消する

肥満と痛風には関係があるとされています。肥満を解消することは、食事摂取量を減らすことも重要です。過食が減ることでプリン体の摂取量も減らすことができます。

水分を多めに摂取

脱水になると尿酸値が相対的に上昇して、痛風発作が起きやすくなります。発作の予防のために水分は多めにとりましょう(目安:1日2リットル)。

高尿酸血症の薬物治療

尿酸値を下げる薬には、尿酸の合成を抑える薬と尿酸の排泄を促進する薬があります。

尿酸の合成を抑える薬

尿酸の合成を抑える薬は尿酸生成抑制薬と呼ばれます。尿酸生成抑制薬はキサンチン酸化還元酵素(XOR)阻害薬であるが、プリン型XOR阻害薬と非プリン型XOR阻害薬に分けられる。

尿酸生成抑制薬
  • プリン型XOR阻害薬
  • 非プリン型XOR阻害薬

尿酸の排泄を促進する薬

プリン体から生成された尿酸は腎臓から尿中へ排泄されます。一度尿中に出た後に腎臓における尿酸トランスポーター1(URAT1)の働きで、尿から尿酸を血液中に再吸収されます。

尿酸排泄促成薬は、尿酸トランスポーターの働きを阻害することで尿酸が尿から再吸収される量を減らします。尿中への尿酸排泄が促進されます。

尿酸排泄促進薬
  • 非選択的尿酸再吸収阻害薬
  • 選択的尿酸再吸収阻害薬

尿酸分解酵素薬

尿酸酸化酵素のラスブリカーゼは尿酸を溶けやすくして腎臓から排出されやすくする作用があります。ラスブリカーゼは、腫瘍崩壊症候群にのみ適応があります。

腫瘍崩壊症候群

化学療法により腫瘍細胞が急激に壊された際に細胞内の物質が大量に放出されます。その結果、高尿酸血症、高カリウム血症、高リン血症、乳酸アシドーシス、低カルシウム血症が生じ多臓器不全に陥ることがあります。

これらの病態を総称して腫瘍崩壊症候群と呼びます。

合併疾患別の治療指針

合併する疾患によって治療方針の調整を行います。以下のリンクからご確認ください。

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