いびきありませんか?「睡眠時無呼吸」に注意!

いびきを指摘されたことはありませんか?

いびきは自分では気づきにくく、周りの方は知っているけど伝えていないだけかもしれません。しかし、いびきをかいている方が注意すべきなのは、睡眠時無呼吸症候群を合併している可能性があることです。

いびきは「睡眠時無呼吸」を見つける大事なきっかけです!

実は睡眠時無呼吸症候群は多くの健康被害を来す意外と怖い病気なのです。自覚のないまま何年も何十年も体に負担をかけてるといろいろな病気が出てきます。

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睡眠時無呼吸とは?

睡眠中に呼吸パターンが異常になる病態を睡眠時無呼吸といいます。睡眠時無呼吸には以下のようなタイプがあります。

閉塞性 無呼吸睡眠中に気道が閉塞することで生じる呼吸障害
中枢性 無呼吸脳からの呼吸を行う信号が欠如することで生じる呼吸障害
混合性閉塞性と中枢性の特徴が混在

これらの睡眠呼吸障害により、睡眠中に呼吸が止まったり弱くなったりして体の酸素が低下する病気を睡眠時無呼吸症候群と言います。

睡眠時無呼吸症候群のほとんどは閉塞性無呼吸です。閉塞性無呼吸により、コントロールの難しい高血圧、心房細動などの不整脈、そのほかの心血管病などいろいろな合併症を引き起こすことがわかっています。

意外と多い閉塞性無呼吸

睡眠時無呼吸症候群は、日本での有病率は4%程度とされています。

治療が必要な人は300万人近くいると考えられていますが、ほとんどの方は治療されていません。

肥満の方でいびきが多い印象があると思いますが、肥満がなくても顔の骨格などでいびきをかくこともあります。

自分や周囲の方で思い当たる場合は、きちんと評価をした方が良いでしょう。

いびき・閉塞性無呼吸になる原因

いびきや閉塞性無呼吸になるのは、睡眠中に筋肉がゆるんで舌や軟口蓋が喉の奥に落ち込んで気道を塞ぐからです。

閉塞性無呼吸

狭くなった気道を空気が通るときに、空気が振動します。空気の振動は「いびき」として聞こえます。

しかし、完全に気道が閉塞してしまうと空気が通らなくなり、いびきは消え、息が吸えない状態(無呼吸)になります。

閉塞性無呼吸になりやすい特徴

以下の特徴がある方は「閉塞性」無呼吸になる可能性があります。

  • 年齢:年をとると閉塞性無呼吸のリスクが増加します
  • 性別:男性は女性と比べてリスクが高いとされています。女性も閉経ごろからリスクが上がります。
  • 肥満:肥満は閉塞性無呼吸のリスクです。脂肪により気道が狭くなります。
  • 下顎の形態:下顎(したあご)が小さかったり、後ろに入り込んでいる顔貌の方は閉塞性無呼吸になりやすいです。日本人に多い原因です。
  • 舌が大きい:特に舌の根本が大きいと気道が閉塞されやすくなります。
  • 扁桃腺が大きい
  • 首が太い、喉の周りの脂肪が多い
  • 喫煙:喫煙習慣は閉塞性無呼吸のリスクを高めます
  • 家族歴
  • 鼻詰まり:鼻詰まりは閉塞性無呼吸のリスクをあげます。耳鼻科で治療をうけることもあります。

閉塞性無呼吸の症状は?

閉塞性無呼吸の症状は、自分では気づいていないこともありますが、以下のような症状があれば注意しましょう。

寝ている間の症状目が覚めた後の症状があります。

寝ている間の症状

睡眠時無呼吸の患者さんの多くは典型的な自覚症状がありませんが、周りの方からいびきをよく指摘されます。寝ている間に何度かトイレに目が覚めたりするのも睡眠時無呼吸が関わっていることもあります。

  • いびきが大きい
  • 寝返りが多い
  • 何度か目を覚ます
  • 口で呼吸している

目が覚めた後の症状

覚醒後の症状と日中の症状があります。

  • 目が覚めたときに体がだるい
  • 目が覚めた時に頭が痛い
  • 喉が渇く、痛みがある
  • 昼間の眠気が強い
  • 記憶力、集中力が低下する
  • 意欲が低下する

特に、起床時のだるさや頭痛、日中の急な眠気は重症の睡眠時無呼吸の可能性があります。

睡眠時無呼吸の合併症

閉塞の状態が長いと血液中の酸素レベルは下がります。脳は呼吸できないことを感知して、眠りを浅くしてしまいます。自分で気づく程度に眠りが浅くなると目が覚めますが、覚めない程度の浅さが続くこともあります。

体は危険を察知していても自分では自覚できないことも少なくありません。睡眠時無呼吸症候群があると、以下のような合併症が懸念されます。

運転中の急な眠気

運転中の事故は睡眠時無呼吸がある患者にとって重大な問題です。特に前兆もなく急に眠ってしまうことがあります。
特に長距離運転や職業運転手の方は、少しでも睡眠時無呼吸を疑ったら、きちんと検査をして治療を受けましょう。最近では睡眠時無呼吸の簡易検査を義務化している会社もあります。

心血管疾患・高血圧

睡眠時無呼吸により、高血圧のコントロールが難しくなったり、心房細動などの不整脈が発生しやすくなります。

また、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)、心不全、脳梗塞と関連があるとされています。

関連ある疾患内容
高血圧高血圧患者の多くで睡眠時無呼吸が合併しています。
特に治療抵抗性の高血圧で合併率が高い傾向にあります。閉塞性無呼吸は高血圧のリスク因子です。
不整脈閉塞性無呼吸は心房細動の独立したリスク因子です。
閉塞性無呼吸は心臓突然死のリスクがあるという報告もある。
特にAHI 20以上、60歳以上、夜間の平均酸素飽和度が78%未満だと注意が必要であると言われています。
心不全閉塞性無呼吸は心不全と強く関与しており、心不全の予後を悪くします。
ただし、心不全では中枢性無呼吸の場合もあります。
閉塞性無呼吸により心不全症状の増悪、心不全による入院、死亡率が増加します。
心不全がなくても、閉塞性無呼吸があると心不全を発症するリスクが上がります。
虚血性心疾患閉塞性無呼吸は虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)の独立したリスク因子です。
低酸素・再酸素化により血管にストレスや炎症が起こり、動脈硬化や心筋梗塞発症に関わっている可能性があります。
脳卒中閉塞性無呼吸は脳卒中のリスク因子です。
さらに脳卒中再発のリスク因子でもあります。

精神的な不安定さ

睡眠は精神的・身体的安定のために重要であり、睡眠不足は精神的な問題を起こしやすくします。

睡眠時無呼吸は、過敏性、うつ病、不安症などとの関連が指摘されています。また、注意力の低下、記憶障害などによりエラーが起きやすくなります。

他の生活習慣病

閉塞性無呼吸の人は、メタボリックシンドロームや2型糖尿病の可能性が高くなると言われています。

また、閉塞性無呼吸があると、非アルコール性脂肪肝疾患のリスクがあがります。

死亡率があがる可能性もある

疫学的研究では、閉塞性無呼吸は生存率を低下させると報告されています。

多くの研究をまとめた報告から、重症の閉塞性無呼吸(AHI ≥ 30)で総死亡や心血管系が原因の死亡が増加するとされています。中等症では死亡率は変わらないとも言われています。

特に心不全を合併している場合、閉塞性無呼吸は死亡率をより増加させます。

睡眠時無呼吸の検査と診断

閉塞性無呼吸は軽症から重症まで段階があります。

重症度の判定には、睡眠ポリグラフ検査(PSG; polysomnography)または簡易モニター検査が行われます。

睡眠ポリグラフや簡易モニターでは呼吸イベントをカウントし、その回数を総睡眠時間で割った値が重症度の判定に用いられます。

呼吸イベント内容
無呼吸(apnea)10秒間以上の気流の停止(気流センサーの振幅が比較基準の90%以上低下)
低呼吸(Hypopnea)10秒間以上の気流の減少に酸素飽和度の低下もしくは中途覚醒を伴う場合

睡眠時無呼吸の簡易モニター検査

検査する場所

自宅で検査することが可能。

睡眠時無呼吸の評価

呼吸イベント指数REI; respiratory event index):検査中の無呼吸や低呼吸のイベント数を総睡眠時間で割った値。睡眠ポリグラフで表されるAHIとほぼ同義。

睡眠ポリグラフと比較して睡眠時間の評価が甘いのでAHIと区別される。低めの値で表示される可能性がある。

重症度の判定と治療方針
REI重症度治療方針
5 未満正常問題なし
5 ~ 15軽症肥満があれば減量を
15 ~ 30中等症肥満があれば減量を
本当に重症ではないか、睡眠ポリグラフ検査での評価を検討
30 以上重症
40 以上CPAP適応CPA治療を推奨
SAS簡易モニターの判定

簡易モニター検査で、REIが「5未満」であれば睡眠時無呼吸はありません。また、「40以上」であればCPAP治療の適応になるくらい重症と診断されます。

40未満で、睡眠時無呼吸症候群による問題があると判断される場合は、睡眠ポリグラフ検査を行い治療方針を決めます。

睡眠ポリグラフ

検査する場所

1泊入院して検査を行う

睡眠時無呼吸の評価

無呼吸低呼吸指数(AHI; apnea-hypopnea index):検査中の無呼吸や低呼吸のイベント数を総睡眠時間で割った値。睡眠ポリグラフでは脳波から睡眠時間を抽出するので正確な評価が可能。

心不全などの患者さんでは、中枢性無呼吸が混在することもあります。睡眠ポリグラフ検査では正確に判定することができます。

重症度の判定と治療方針
AHI重症度治療方針
5 未満正常問題なし
5 ~ 15軽症肥満があれば減量を
15 ~ 30中等症肥満があれが減量を
20以上であればCPAPを推奨
30 以上重症
20 以上CPAP適応CPA治療を推奨
SAS簡易モニターの判定

一般的には外来・自宅で検査可能な簡易モニター検査を行い、CPAP適応の正確な判定が必要な時に入院で睡眠ポリグラフ検査を勧めます。

これらの検査にて睡眠時無呼吸症候群の重症度を判定し、治療の方針を決めていきます。重症の閉塞性無呼吸に対しては、CPAP(シーパップ)治療が薦められます。

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