心房細動について:心臓のリズムを乱すサイレントキラー

心房細動を有する患者さんは100万人程度います。心房細動は放っておくと脳梗塞や心不全などのリスクを高める可能性があります。心房細動による症状は合併症リスク、治療法について説明します。

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心房細動って何ですか?

心房細動とは、心臓の上の部屋である心房が震え(細動)、心室の脈拍が不規則になる不整脈です。

心房細動になると、心房の至る所で電気信号がランダムかつ高頻度に発生したり消えたりします。

混沌とした電気信号により、心房はぶるぶるとけいれんしています。この状態を細動と呼びます。

心房のランダムかつ高頻度な電気信号は不規則に心室へ伝導します。脈拍が不規則になり、速くなることもあります。脈拍が乱れることで、動悸を感じることがあります。

心房細動の持続時間や頻度による分類

心房細動は持続時間で分類されます。

  • 発作性心房細動:数分間〜数時間持続するが、自然に心臓のリズムが正常に戻る。出現する頻度は、年に数回から日に数回と人によって違います。
  • 持続性心房細動:心房細動が自然に止まらなくなり、持続した状態。
  • 長期持続性心房細動:心房細動が持続したまま、1年以上が経過した状態。
  • 永続性心房細動:心房細動が何をしても止まらなくなった状態。

心房細動の症状・合併症は?

心房細動の3つの大きな問題が生じることがあります。それは、症状・脳梗塞・心不全です。

心房細動による問題点には以下のようなものがあります。

  • 自覚症状による生活の質(QOL)の低下
  • 脳梗塞のリスク
  • 心不全のリスク
自覚症状による生活の質低下

心房細動の症状は以下のようなものがあります

一方で、全く自覚症状がない方もいます(無症候性)。しかも心房細動患者さんの4割〜5割は無症候であるとする報告もあります。

脳梗塞のリスク

心房細動になると心房の中の血流が停滞し、血液の固まり(血栓)ができる可能性があります。血栓が心房から剥がれると、全身に流れ出ることになります。

脳を栄養する動脈の血流が途絶えたら脳梗塞になります。

心房細動がきっかけで脳梗塞になった場合、梗塞範囲が広く重篤な後遺症(麻痺、寝たきりなど)が残る可能性が高いです。

適切な治療で予防します。

心不全のリスク

心不全とは心臓のポンプ機能が落ちることで、息が苦しくなったり全身が浮腫んだりする状態です。

心不全と心房細動は相互的に関係しています。心房細動が原因で心不全になったり、心不全があることで心房細動になったりします。

心房細動が明らかに心不全に悪影響を及ぼしている場合は、積極的な治療を検討します。

心房細動の原因は?

心房細動の原因として報告されているものには、次のような疾病・状態がわかっています。

  • 加齢
  • 高血圧
  • 心臓弁疾患
  • 先天性心疾患
  • 心筋症
  • 虚血性心臓病
  • 心臓術後
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 糖尿病
  • 肥満
  • 甲状腺機能異常
  • 肉体的および精神的ストレス
  • 喫煙
  • アルコール
  • 肺疾患(気管支喘息、肺気腫など)
  • 肺塞栓症

原因の多くに修正可能なものが含まれています。

注意が必要な病気・原因

心臓の病気・心不全

心筋梗塞や心筋症などの心臓の病気がある場合は、心臓に負荷がかかりやすく心房細動が発生しやすくなります。

心臓を保護する薬や血圧の管理を行い、良い生活習慣を続ける必要があります。心不全の状態になると不整脈はより発生しやすくなります。

甲状腺機能異常

特に甲状腺機能亢進症があると心房細動が発生しやすくなります。逆に心房細動の検査中に甲状腺機能異常が見つかることもあります。

睡眠時無呼吸

睡眠中の呼吸障害により心房細動が発生しやすくなります。いびきの指摘があれば、検査を受けましょう。

アルコールを飲み過ぎ

アルコールを飲み過ぎて、血液中のアルコール濃度があがると心房細動が起きやすくなります。特に心房細動の発生とよく関連します。

心房細動の診断は心電図で!

不整脈の診断は心電図で行われます。

不整脈が発生していない時の心電図をみても診断はつきません。不整脈にも持続するタイプとたまに出るタイプがあります。たまに出るタイプの不整脈を見つけるためにいろいろな心電図の装置を駆使します。

心房細動の治療は?

心房細動に対する治療は、いくつかの選択肢を組み合わせて決めていきます。その治療法も時間の経過とともに変化していくこともあります。

心房細動治療の考え方

STEP
脳梗塞の予防が必要か?

心房細動による脳梗塞が発生するリスクが高いと判断された場合に予防を行います。抗凝固薬が使用されることが多いでしょう。

STEP
症状・心不全で困っているか?

心房細動による症状・心不全で困っていたら、心房細動に対する介入を行います。そこで決めることは心房細動のままで調整するのか、心房細動を止めて再発しないようするのかです。

心房細動のままであれば、脈拍を調整する治療を行います。

心房細動を止めて再発を予防するには、薬物治療を行なったりカテーテルによる治療を検討します。

STEP
原因を含めて介入が可能か?

心房細動になるには原因があることが多いです。その原因は生活習慣に関わることも少なくありません。心房細動以外にも問題がないかを評価します。

積極的に修正可能なライフスタイルを見直していきます。

心房細動治療の選択肢
  • 抗凝固薬による脳梗塞予防
  • 内服薬による脈拍の制御:心房細動のまま脈拍が速くならないようコントロールする
  • カーディオバージョン:いわゆる電気ショックのこと 強い電気刺激で一旦心房細動を止める(再発する可能性あり)
  • 内服薬による心臓のリズムの制御:飲み薬で心房細動が出現しないように調整する 自分のリズムを維持する
  • アブレーション治療:カテーテル治療で心房細動の再発を抑える 内服薬よりも効果がある
  • ペースメーカー植込み:心房細動に合併して脈拍が遅くなり、めまいや失神があればペースメーカー植込みを考慮する

不整脈を減らす生活習慣

バランス良い食事

飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を抑えるため肉類や菓子類は控えましょう。肉よりも魚を選択します。

炭水化物は取り過ぎに注意(ご飯の量を測る)し、全粒穀物(玄米、全粒粉など)の割合を増やしましょう。野菜、きのこや海藻などを多く取り入れましょう。

果物も適度に食べてください。発酵食品も良いかもしれません。

適度な運動健康的な体重を維持

できるだけ座っている時間を短くします。息が上らない程度の持続的な運動(有酸素運動)を可能であれば、30分間行うことを目標にしましょう。まずはいつもより10分間は歩くなど、身体活動を生活に取り入れます。

肥満があれば、減量に励んでください。肥満は多くの心臓病や生活習慣病のリスクを高めます。

血圧コレステロールのコントロール

高血圧や高コレステロール値は、心臓病のリスクを上げます。心臓の負担を取るためにもライフスタイルの見直しに努めましょう。

健康診断などで指摘されたら、かならず近くの医療機関に相談しましょう。

ストレスのコントロール

精神的および身体的ストレスは、不整脈を増やし心臓に悪い影響を与えます。不必要なストレスを避けるように心がけましょう。

瞑想やヨガなども効果があるでしょう。

アルコールを制限

アルコールと不整脈は強く関係しています。不整脈を持っている方は、アルコールはできるだけ摂取しないほうが良いとされています。

禁煙

喫煙習慣も心臓への負担を増やし、不整脈に影響します。禁煙を強く勧めます。

近くの禁煙外来をしているクリニックに相談してもよいでしょう。

睡眠時無呼吸症候群の評価を

睡眠時無呼吸症候群は不整脈の原因となります。さらに不整脈以外にも、多くの病気の原因になります。

いびきや睡眠中の無呼吸が指摘されたことがあれば、一度は必ず検査を受けましょう。重症度に応じてCPAP治療などを行います。きちんと治療をしないと予後が悪いこともわかっています。

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