健康診断などで血液検査を行われた時にどうしたらよいか迷うことがあるかと思います。
2023年6月に肝臓の専門家の集まりである日本肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表しました。「奈良宣言」では、慢性肝臓病(CLD; chronic liver damage)を定義されました。
肝炎ウイルスや脂肪肝、アルコールなどにより引き起こされる慢性肝臓病の発見と診断についての提言についてまとめました。
ALT 30 以上ならかかりつけを受診
健康診断では肝障害の指標として血液検査でASTやALTが測定されます。これまでの多くの報告から、ALT 30 U/L以上は異常値であると判定されることになりました。
ALT 30 U/L以上は異常値である
健康診断でALT 30以上を指摘されたら、かかりつけ医に相談しましょう。
かかりつけ医で評価させる項目は?
かかりつけ医では、以下のようのような項目がチェックされます。
- 肝炎ウイルス検査
- 生活習慣病の合併(+ 血小板数、FIB-4 index)
- アルコール摂取量(+ AST、γGTP検査)
- 薬歴など
肝炎ウイルス検査のスクリーニング
B型肝炎ウイルス:HBs抗原(ウイルスが肝臓にいる可能性)
C型肝炎ウイルス:HCV抗体(ウイルスに感染している or 感染していた)
生活習慣病の合併
生活習慣病、特に肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧の合併をチェックします脂肪肝がないかも評価されます。
FIB-4 index
FIB-4 indexは肝臓の線維化を推定する値で、以下の式で計算されます。
FIB-4 Index=(年齢 ✕ AST)/(血小板数 ✕ √ALT)
AST、ALTの単位はU/L、血小板数は 0.1万/μL
- 低 値(1.3以下): 肝疾患による線維化の進行リスクは低く、経過観察
- 中間値(1.3~2.67):線維化が進行している可能性があり、肝臓の専門医受診を。
- 高 値(2.67以上):高い確率で肝硬変、または肝硬変に近い状態になっています。肝臓の専門医受診を。
アルコール摂取量
飲酒量が男性で 60 g/日以上、女性で 40 g/日以上
消化器内科・肝臓専門医へ相談する基準とは?
肝炎ウイルス検査で陽性
ウイルス肝炎検査にてHBs抗原やHCV抗体が陽性であった場合は、消化器内科での評価を依頼します。
生活習慣病で肝臓の線維化を疑う
生活習慣病である肥満・糖尿病・脂質異常症や高血圧などがあり、肝臓の線維化を疑う場合は消化器内科での評価を依頼します。
- 血小板数 20万/mm3未満
- FIB-4 index 1.3以上
アルコール性肝障害を疑う
アルコール性肝障害を疑う場合は、飲酒量をチェックします。
アルコール性を疑う基準:アルコール摂取量 男性 60 g/日以上、女性 40 g/日以上
基準以上の飲酒をしていて、ASTやγGTPの異常がある場合は、消化器内科での評価を依頼します。
その他
薬歴から薬剤性肝障害が疑われたり、原因がはっきりしない場合も消化器内科での評価を依頼します。