ヒートショック現象とは
ヒートショック現象とは、生活環境のおいて急激な温度変化によって血圧が急に上がったり(または下がったり)、脈拍が増えたりすることです。
急激な血圧の変化は、血管や心臓などに負荷をかけ以下のような重篤な状況を引き起こす可能性があります。
体が冷えると血管は収縮し、血圧上昇
ヒトが健常な状態を維持するために体温は重要な役目を担っています。外気温が下がると、体温を維持しようといろいろな機構が働きます。体の震えや血管の収縮です。
体温を上げようと筋肉が収縮したり弛んだりします。これが体の震えです。また、体の中では血管が収縮することで、大事な体の中心部に温かい血液を留めようとします。血管が収縮すると、血圧が上昇します。
急に血圧が上がると血管に負担がかかります。元々、血管に負担がかかった状態だと、負荷により血管にヒビが入ったり、血管が破れたりすることがあります(大動脈解離、脳出血など)。
また、血圧が上がると心臓の負担が増えます。心不全になったり、不整脈が発生したりします。
体が温まると血管は広がり、血圧低下
体が温まると、血管を広げて体温が上がりすぎないように調整が始まります。血管が広がると血圧は低下します。
元々、血管が動脈硬化などで狭くなっていると、急な血圧低下で血流が低下したり途絶えたりします。脳の血管で起これば脳梗塞、心臓の血管で起これば心筋梗塞になります。
また、血管が広がった状態で急に立ち上がると脳への血流が減って、めまいがしたり一過性に意識がなくなったりします(いわゆる起立性低血圧)。浴槽から出た後に意識がなくなって倒れて怪我をしたりします。
ヒートショックに注意が必要な冬場の入浴
ヒートショックは特に外気温の低い冬の入浴前後に起きやすいことがわかっています。暖かいリビングから寒い浴室へ移動し、熱いお風呂入って上がりまでヒートショックになりやすい状況を示します。
暖かいリビング
暖かいリビングでは血管は広がっている
寒い脱衣所
寒い脱衣所で服を脱ぐと、一気に体が冷えていきます。血管は収縮し血圧が上昇します。
さらに寒い浴室
全裸の状態で浴室に入ります。浴室はさらに寒いことがあります。血圧はさらに上昇します。
熱い浴槽
震えながら、熱い浴槽に入ります。しっかり温まろうとたっぷり入浴します。血管が広がって血圧が急に低下します。
浴槽から出る
血管がしっかり広がっている状態で、浴槽からでます。立ち上がることで血圧がさらに低下して、めまい・失神することがあります(起立性低血圧)。
寒い浴室・脱衣所
そして、寒い浴室から脱衣所へ移動し、また血管は収縮し血圧が上昇します。
ヒートショックが起こるのは入浴の時だけではなく、トイレなどでも起こりえます。
救急車を呼ぶ場合
次のような症状がある場合、迷わずに救急車を呼びましょう。重篤な状態であった場合は、できるだけ早く処置を始めることが重要です。
- 意識が回復しない
- 胸の痛み、息苦しさが続いている
- めまいやふらつきが続いている
- 体の片方が動かしにくい
- うまく話せない・呂律が回らない
ヒートショックに注意が必要な方
ヒートショックの影響を受けやすいのは、高齢者や生活習慣病を持っている方です。次のような特徴を持っている方は、ヒートショック対策をしましょう。
- 65歳以上
- 高血圧、糖尿病などの
- 肥満、睡眠時無呼吸症候群
- 不整脈
- 熱い風呂を好む
- 飲酒後に入浴する
- 長風呂を好む
ヒートショックを予防する
ヒートショックを予防するために、以下のようなことに気をつけましよう。
室内の温度差をなくす
お風呂に入る際には、脱衣所や浴室を事前に暖めるようにします。脱衣所に暖房装置を置いたり、お風呂の蓋をせずに浴室を暖めます。浴室暖房があれば活用します。
トイレも低温になっていることがあります。トイレ内も暖める工夫をしましょう。
入浴の注意点は
お風呂の温度は40度前後に設定し、長い時間お湯につかることを避けましょう。
また、浴槽から出るときにゆっくりと出ましょう。血管が広がった状態で、急に立ち上がると起立性低血圧が起きやすくなります。力が抜けて転倒することもあり、ケガのリスクになります。
トイレは座って
特に男性は立位で用を足すときに注意が必要です。排尿の刺激で血管が開いて血圧が下がって、転倒するリスクがあります。
特に冬場は、トイレは座って用を足しましょう。
入浴前の飲酒・食事を控える
飲酒をすると血管が広がって血圧が下がりやすくなります。また、食事をすると消化する臓器に血液が分布され、血圧が下がりやすくなります。
入浴直前の飲酒や食事を避けましょう。