β(ベータ)遮断薬:特徴と注意点

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特徴

交感神経のアドレナリン受容体のうち、β受容体を阻害する薬です。心臓の過剰な収縮や速い脈拍を抑えることで降圧効果を得ます。

一部のβ遮断薬では心臓を保護する働きがあり、心臓の機能が低下し心不全を発症している方に積極的に導入されます。

心臓を休ませる方向に働くため、狭心症の症状を改善したり、不整脈(心房細動やその他の頻脈性不整脈)を抑制する効果があります。

血圧を下げる作用

激しい運動や精神的な緊張状態になると、交感神経系という全身を調整するシステムの一つが活発になります。交感神経が興奮すると、副腎(腎臓の上にある臓器)からアドレナリンというホルモンが分泌されます。

アドレナリンは全身の臓器を刺激しますが、その際にいくつかの種類の受容体に結合することで刺激を伝えます。その受容体は、α受容体β受容体があります。さらに、α受容体はα1受容体、α2受容体に分類され、β受容体はβ1受容体、β2受容体、β3受容体に分類されます。それぞれ違った働きに関わっています。

アドレナリンが作用する受容体と効果

  • α1受容体:血管収縮、瞳孔散大など
  • α2受容体:血管拡張、血小板凝集、脂肪分解抑制など
  • β1受容体:主に心臓に存在。心臓の収縮力を上げる。心臓の電気伝導速度を上げる。自動能を上げる。
  • β2受容体:気管支の弛緩、血管拡張
  • β3受容体:脂肪分解

簡単にアドレナリンの働きをまとめると、「血圧を上げ(α1)、心臓の収縮を強くし(β1)、脈拍を増やし(β1)、気管支を広げて息を吸いやすくする(β2)」と言えるでしょう。

β遮断薬はアドレナリンがβ受容体に結合するのをブロックします。なかでもβ1受容体をブロックすることで、心臓の過剰な収縮を抑え、脈拍を下げることで降圧効果を効果します。

この時、β1受容体以外にβ2受容体もブロックする薬があります。ほぼβ1受容体のみブロックするβ遮断薬はβ1選択性が高いと表現されます。

心臓を休ませる方向に働くβ遮断薬は、心臓の働きが低下し頑張りすぎている心臓に対して保護的に働くことがわかっています。心機能低下の進行や心不全の予防に用いられます

さらに心臓が興奮することでおこる頻脈性(脈拍の速い)不整脈に対しても効果があります。β遮断薬は頻脈性不整脈の予防や治療に用いられます

β遮断薬の違い

β1選択性

β受容体を全体的にブロックすると、β1受容体だけでなくβ2受容体の働きも阻害されます。

β2受容体は気管支の弛緩と収縮に関与しており、β2受容体をブロックすると気管支が収縮します。呼吸をする時の空気の通り道が狭くなり、気管支喘息や閉塞性肺疾患があると病状が悪化することがあります。

β遮断薬のなかでも、β1受容体に選択的に阻害効果を示す薬剤はβ1選択性が高いと表現されます。β2受容体への効果が低いことを意味します。

  • β1選択性が高いβ遮断薬:ビソプロロール、メトプロロールなど
内因性交感神経刺激作用(ISA)

β遮断薬はカテコラミンがβ受容体に結合し活性化することを阻害します。

β遮断薬の中には、カテコラミンが多くない(交感神経が緊張していない)状況では、むしろβ受容体を活性化する方に働く薬があります。安静時にはβ受容体を刺激し、脈拍が増えたり、心臓の収縮を強めたりします。

このような反応を、内因性交感神経刺激作用(ISA)といいます。

心臓の負担を増やす可能性が指摘されており、最近ではISA作用がないβ遮断薬が専ら処方されます。

α遮断作用

カテコラミンの効果はα受容体にも働きます。α受容体を刺激すると血管は収縮し、血圧があがります。

β遮断薬の一部には、β受容体遮断作用とα受容体遮断作用の両方を併せ持つ薬があります。

  • α受容体遮断作用のあるβ遮断薬:カルベジロール

血管拡張作用があることで、起立性低血圧が起きやすくなります。

副作用

  • 低血圧:血圧が下がりすぎるとふらつきやめまいを自覚します。
  • 徐脈:脈拍を抑える効果もあるため、脈拍が遅くなる不整脈(徐脈性不整脈)を引き起こす可能性があります。特に高齢者は注意が必要です。
  • 呼吸困難:β2受容体をブロックすることで気管支が収縮し、喘鳴や息苦しさがおこる可能性があります。気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(肺気腫とかCOPD)などの肺疾患がある場合は、β1選択性が高い薬が選択されます。

注意事項

めまいやふらつきを自覚する場合は、症状がある時の血圧を測ってみましょう。血圧が下がり過ぎている場合は、薬を減らしたりやめたりします。主治医に相談しましょう。

心臓が悪い方、高齢者、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患の方は、ごく少量から使用が開始されます。副作用がないようでしたら、徐々に増量していきます。

心臓を保護する作用は多くのβ遮断薬を内服することでより効果が期待されます。低血圧に注意しながらできるだけ増量することを試みます。

β遮断薬の一覧

一般名商品名β1選択性α遮断適応用法・用量
ビソプロロールメインテート最も高いなし高血圧
狭心症
慢性心不全
頻脈性心房細動
心室期外収縮など
高血圧: 1日1回 5mg
(適宜増減)
心不全: 1日1回 0.625mgから
(維持量 1.25mg-5mg)
心房細動: 1日1回 2.5mgから
(5mgまで)
ビソノテープ最も高いなし高血圧
頻脈性心房細動
1日1回 4mgから
(8mgまで)
メトプロロールセロケン
ロプレソール
ありなし高血圧
狭心症
頻脈性不整脈
1日2~3回、1回20mgから
(1日 120mgまで)
アテノロールテノーミンありなし高血圧
狭心症
頻脈性不整脈など
1日1回 50mgから
(100mgまで)
カルベジロールアーチスト低いあり高血圧
慢性心不全
狭心症
頻脈性心房細動
高血圧: 1日1回 10-20mg
(適宜増減)
心不全: 1日2回、
1回 1.25mgから開始し
慎重に増量し、1回 10mgまで
プロプラノロールインデラル低いなし高血圧
狭心症
心房細動
期外収縮
褐色細胞腫術後
片頭痛など
1日3回、1回10mgから
(1日 60mgまで)

β遮断薬は他にも種類があります。

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