糖尿病性腎症は透析の原因 第一位

糖尿病の罹病期間が長く、かつ血糖コントロールが不十分であれば合併症のリスクは高くなります。しかも、糖尿病の合併症は大きく日常生活の質を低下させるような重篤なものが少なくありません。

糖尿病の合併症は「小さい血管の病気」と「大きめの血管の病気」に分けられます。

小さい血管の病気は糖尿病の3大合併症と呼ばれる「糖尿病網膜症」、「糖尿病性腎症」、「糖尿病性神経症」があります。

ここでは糖尿病性腎症について説明します。

コンテンツ

糖尿病性腎症は透析の原因 第一位

腎臓は非常に小さい血管が多く存在し、糖尿病で腎臓の小さい血管が傷つくと腎臓の働きが低下します。

腎臓の働きが低下すると体に老廃物が溜まっていきます。

進行した場合、生命を維持するためには透析治療や腎移植が必要になります。

糖尿病性腎症は透析治療の原因の第一位です。

定期的に検査を受けよう

糖尿病になってから、腎症が出てくるのに10年程度かかると言われています。

つまり、糖尿病になってすぐに腎不全状態になり透析が必要になるわけではありません。しかし、腎症は自覚症状なく経過し、急に手足がむくみ出したり、体調が悪くなったりします。

糖尿病性腎症があるかどうかを知ることができるのは尿検査と血液検査です。

定期的に尿・血液検査をして、腎症がないか、進行がないかを確認してもらいましょう。早めに治療することで透析までの期間を伸ばすことができます。

尿検査(尿中アルブミン、尿中タンパク)

尿検査で尿中のアルブミンやタンパクを測定します。通常、タンパク質は血液から尿へ排出されることはありません。糖尿病性腎症が始まるとまずは小さいタンパク質(アルブミン)が尿中に漏れ出してきます。進行すると多くのタンパク質が漏れ出すようになります。

安定して尿中に排出されるクレアチニンとの比較で尿アルブミンや尿タンパクの排泄量を補正します。進行度を推定するのに重要な検査です。

  • 尿 微量アルブミン
  • 尿 タンパク
  • 尿中アルブミン/クレアチニン比(mg/gCr):正常値 30 mg/gCr 未満
  • 尿中 タンパク/クレアチニン比(g/gCr)
腎臓の血液検査

腎臓の機能を血液検査から推定するには、腎臓が本来なら尿に排出すべき老廃物が血液中のどのくらい溜まっているかを測定します。クレアチニンは尿へ排出される老廃物であり、血液中の濃度は高くならないように腎臓が調整しています。

クレアチニンは筋肉から出てくる物質なので、高齢者ややせがあり筋肉量が少ない方は低めに測定されます。その場合は、シスタチンCという物質を測定します。

腎臓においてどのくらいきちんと尿を排出できているかを推定するのがeGFRという値です。クレアチンまたはシスタチンCと年齢、性別から計算されます。クレアチニンやシスタチンCを測定すると自動検査されて結果が報告されます。

  • クレアチニン:正常値 男性 0.8〜1.2 mg /dL、女性 0.5〜0.9 mg /dL
  • シスタチンC
  • eGFR:正常値 60 mL/分/1.73m2 以上

糖尿病性腎症のステージ

糖尿病性腎症は小さなタンパク質であるアルブミンが尿中に漏れ出ることから始まります。最終的には腎不全状態となり透析治療が必要になります。進行の早さには個人差がありますが、下記のような経過をたどります。

ここで表示されている尿中アルブミン値とは、尿中アルブミン/クレアチニン比(mg/gCr)のことであり、尿中タンパク値とは尿中タンパク/クレアチ二ン比(g/gCr)のことです。またeGFRの単位はml/分/1.73m2です。

Stage
第1期(腎症前期)

糖尿病で治療されているが、尿中にアルブミンは排出されてなくて腎機能も保たれている状態

尿中アルブミン

尿中アルブミン値 30未満(正常)

腎機能・eGFR

30以上

腎症による自覚症状

なし

Stage
第2期(早期腎症期)

尿中に微量のアルブミンが排出され始めたが、腎機能は保たれている状態

尿中アルブミン

尿中アルブミン値 30〜299

腎機能・eGFR

30以上

腎症による自覚症状

なし

Stage
第3期A(顕性腎症期)

尿中にアルブミンが多く排出されており、より大きなタンパク質も漏れ出し始めている。まだ、腎機能は保たれている状態

尿中アルブミン

尿中アルブミン値 300 以上 あるいは 尿中タンパク値 0.5以上

腎機能・eGFR

30以上

腎症による自覚症状

むくみ、食欲不振、息切れなど

Stage
第4期(腎不全期)

タンパク尿だけでなく、腎臓の機能が落ちてしまった状態

尿中アルブミン

問わない

腎機能・eGFR

30未満

腎症による自覚症状

疲労感、気分不良、嘔気・嘔吐など

Stage
第5期(透析療法期)

腎機能低下が進んで自分の腎臓だけでは日常生活を維持できずに、透析治療が必要になった状態。

糖尿病性腎症の治療

糖尿病性腎症の発症および進行の予防は厳格な血糖コントロールが基本です。まずはHbA1cを7%未満にするように食事や運動療法、薬物治療を続けます。

次に大事なのは他の生活習慣病の治療です。特に高血圧はそれだけでも腎臓に障害を与えるため、血圧をしっかりとコントロールします。

食事療法の強化

腎症が進行し、尿中のアルブミンやタンパク質が増えてきたら食事療法が必要になります。食事で摂取するタンパク質を制限する必要が出てきます。また、むくみなどが出てきたら塩分制限も強化します。

腎障害が進行(eGFRが低下)が進んだら、カリウムが上がらないようにカリウム制限が必要となります。

薬物治療

糖尿病性腎症に対する薬物治療の目的は、進行を遅らせることです。透析への移行までの期間を伸ばすために下記のような薬が使用されます。

透析治療・腎移植

自分の腎臓では老廃物を排出できずに日常生活が送れなくなった場合は、透析治療が選択されます。腹膜透析と血液透析があります。

また、他の人から腎臓を移植する方法もあります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
コンテンツ