仮面高血圧は、診察室などの血圧は高くないものの自宅での血圧が高いタイプです。
病院などで測定しても高くないため、見逃されることがあります。気づき難いため仮面高血圧と呼ばれます。仮面高血圧は、一般的な高血圧の場合と同じように心臓や血管の病気が発生する可能性があります。
仮面高血圧は血圧が上昇するタイミングで、早朝高血圧、昼間高血圧、夜間高血圧の3つのタイプがあります。特に注意が必要な早朝高血圧と夜間高血圧について説明します。
早朝高血圧について
早朝高血圧とは
血圧は1日の間で変動しています。朝起きてから血圧は徐々に上昇していき、日中の活動中は高い状態を維持します。夕方から夜にかけて血圧は下がっていき、睡眠中は血圧は最も低下します。
早朝に血圧が上昇するものを「早朝高血圧」と言います。起床から1〜2時間の血圧が、収縮期血圧 135mmHg以上、拡張期血圧 85 mmHg以上になっている場合、早朝高血圧と診断されます。
早朝高血圧による問題
早朝に急激に血圧が上昇(モーニングサージ)するタイプは、高齢者で血管が硬い人に起こりやすいといわれています。動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中が発生するリスクが高くなります。
早朝高血圧を見つける
早朝高血圧は、診察室で測定しても見つけることはできません。高血圧に該当しない場合、正常高値血圧や高値血圧の場合は、早朝血圧が隠れている可能性を考えましょう。
早朝高血圧を診断するのは、家庭血圧を測定することが有効です。肥満やメタボリックシンドローム、睡眠時無呼吸症候群など他の疾患の患者さんや、やや高い血圧が記録された方は早朝高血圧がないかを家庭血圧で確認しましょう。
高血圧治療中の早朝高血圧
高血圧の薬を飲んでるからもう大丈夫、と思っていませんか?
診察室の血圧が良いからといって気を抜いてはいけません。高血圧の内服をしていても、早朝高血圧が残っている場合があります。内服のほとんどは朝食後に行われます。そのため、早朝には薬の効果が弱くなっている可能性があります。
治療をしている方も必ず家庭血圧で早朝高血圧がないかを確認しましょう。
早朝高血圧の治療
早朝高血圧の治療には、まずライフスタイルの改善を行います。それでも血圧がコントロールされていなければ薬物治療が考慮されます。
治療目標は、朝の血圧が収縮期血圧 125mmHg以下、拡張期血圧 75mmHg以下です。
夜間高血圧
夜間高血圧とは
血圧は1日中変動していますが、睡眠中は活動している昼間に比べて低下します。
夜間高血圧では、就寝中に血圧が下がりません。むしろ上がることもあります。夜間血圧の平均値が、収取期血圧 120mmHg以上、拡張期血圧 70mmHg以上で夜間高血圧と診断されます。
夜間高血圧による問題
夜間高血圧になりやすい方の特徴は、高齢者や糖尿病、慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群などです。
夜間高血圧があると、脳卒中や心血管病のリスクがあがります。また、心不全のリスクも上がるとされています。朝方を含めて日中の血圧がコントロールされていると思っていても十分ではないのかもしれません。
夜間高血圧をみつける
夜間高血圧を見つける方法は、就寝中に血圧を測定することです。
そこで使用されるのが24時間自由行動下血圧測定(ABPM)です。血圧計を腕に装着して行動し、夜も装着したまま寝ます。装着の違和感や時間ごとに血圧を測るため、落ち着かなくて眠れなくなり、正確に夜間就寝中の血圧が測れないことがあります。
OMRONから発売された血圧計「HEM-9601T (Night View)」は、夜間の血圧を測定できます。測定の音を小さくし、睡眠に影響を与えないように自動で3回血圧を測定します。まだ一般販売されていません。
夜間高血圧の治療
夜間高血圧の治療法は、ライフスタイルの改善になります。とりわけ塩分制限が重要です。
また、睡眠に問題がある場合も夜間高血圧の要因になります。睡眠の質の改善に取り組みましょう。特に睡眠時無呼吸症候群があれば、検査をして適切に治療を受けましょう。