閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、多くの人に睡眠障害を起こしています。睡眠時無呼吸症候群があると、呼吸が止まったり、いびきをかくことで睡眠の質が低下し、日中の眠気などの症状がでることがあります。
睡眠時無呼吸の検査にて治療基準を満たす重症と診断された場合、CPAPが適応となります。いびきや無呼吸は本人に自覚がないこともあります。日中の眠気などの症状が無くても、体には大きな負担をかけている場合があります。
CPAPを装着することでどのような影響があるか、これまでの報告からわかっていることを説明します。
- 心臓の健康が保たれる
- 昼間の眠気が改善する
- メンタルヘルスが改善する
- いびきが減る
心臓の健康が保たれる
高血圧に対する効果
夜間の血圧を下げる効果があります。また、CPAPの装着時間が長くなると血圧を抑える効果が期待できます。ちなみに口腔内装置も血圧を下げる効果が報告されています。
心房細動に対する効果
CPAP治療を行うことで、心房細動の再発が減ることが報告されています。また、発作性から持続性心房細動へ進行することも抑える可能性があります。
心不全に対する効果
心不全患者さんの死亡率を低下させる効果があります。
心不全では睡眠時無呼吸の状態として閉塞性無呼吸と中枢性無呼吸が混在していたり、中枢性無呼吸が優位だったりします。
CPAPにより、睡眠の質が上がり日中の眠気も改善しますが、心臓の働きをよくするという効果ははっきりしません。
虚血性心疾患に対する効果
CPAP治療が心筋梗塞予防に効果があるかははっきりしていません。
脳卒中に対する効果
CPAP治療は脳卒中の再発予防に効果があります。
CPAPすると死亡率は改善するのか?
- CPA治療すると死亡率は長期間観察すると改善する
肥満と閉塞性無呼吸がある患者を平均11年間観察した研究によると、CPAP治療を行うと治療してないグループと比較して死亡率が62%低下することが示されています。
そして、その差は6、7年間が経ってから明らかになっていきます。1
- CPAPは続けることが大事
CPAPを処方され継続したグループと辞めしまったグループを平均3年間追跡した研究では、CPAPを継続すると辞めてしまったグループと比較して死亡のリスクが39%低下している。
重症の閉塞性無呼吸と診断された場合、CPAP治療をすることで死亡率が低下する。その効果を十分に得るためには、継続することが重要です。
昼間の眠気が改善する
睡眠時無呼吸は睡眠の質が低下したり、睡眠時間の量が減ることでいろいろな症状を自覚することがあります。CPAPで閉塞性無呼吸の治療がうまくいくと、それらの症状の改善を実感するでしょう。
起床後の倦怠感や頭重感、日中の集中力の低下などもCPAP治療に改善する可能性があります。
CPAPで自動車事故のリスクが下がる
閉塞性睡眠時無呼吸によって引き起こされる日中の眠気は急に激しく襲ってくることがあります。急に眠ってしまう状態が自動車運転中に生じてしまう可能性があります。
自動車運転中に眠ってしまえば、自動車事故を引き起こしてしまいます。
CPAP治療をすること閉塞性無呼吸患者さんの自動車事故の頻度は、正常の方と同じくらいに低下します。しかし、この効果はCPAPを就寝中に4時間以上装着することで発揮されます。
CPAPは閉塞性無呼吸患者さんの自動車事故のリスクを低下させます。その効果を得るためにはできるだけCPAPを装着する必要があります。
メンタルヘルスが改善する
睡眠時無呼吸は精神的な状態に悪い影響を及ぼします。不安感、パニック障害、うつ病などのリスクが高くなることが知られています。
睡眠の質が低下することで、日中の集中力が低下します。仕事のパフォーマンスが低下し、職場での評価が下がったり、ストレスの原因になり得ます。
うつ病の症状の一つは睡眠障害です。不眠状態はさらに精神的安定を脅かします。睡眠時無呼吸による睡眠の質の低下はうつ症状を増悪させます。
CPAP治療はメンタルヘルスに有効
睡眠時無呼吸がありCPAP治療が必要な患者さんのデータから、うつ病の症状を評価した報告2があります。それによりますと、CPAP治療はうつ病の症状が軽減させることがわかりました。
特にすでにうつ病症状がある患者さんで、より効果が示されています。
一方で、CPAPをきちんと装着しているかどうかで効果が違うこともわかっています。その報告3では、平均装着時間が4時間を超えているかどうかでみた場合に、4時間を超えてCPAPを装着している方がよりうつ病の症状を改善させています。
CPAPはメンタルヘルスに良い影響を与える可能性があります。
いびきが減る
CPAPで周囲の人も安心
閉塞性無呼吸の症状で最も多いのはいびきです。自分では気が付いていなくても、一緒に生活をしている方にとっては騒音です。周囲の人も睡眠の質を下げたり、メンタルヘルスを阻害している可能性があります。
CPAPを装着するといびき・無呼吸は減ります。息が止まっていて心配だった周囲の人も安心できますし、騒音の被害も減ります。
CPAPは旅行にも携行しましょう
CPAPは持ち運び可能な小さなバッグに入れて携帯することができます。
宿泊を伴う旅行には携行しましょう。特に同室する方がいる場合は、いびきにより周囲の人が被る睡眠障害を改善することができます。