心房細動について:よくあるご質問

心房細動の治療方針を決める際に、心房細動について説明した後によく聞かれる質問がいくつかあります。

心房細動は自然に治ることがありますか?

一般的に心房細動は自然に治りません(例外あり)

心房細動は風邪のように治ってしまうことはありません。一般的に心房細動は診断されたら、ずっと心房細動のリスクがついてきます。

ただし、初回の発作性心房細動は一度停止すると2回目の発作がいつくるかわからないこともあります。

心房細動は進行する(発作の頻度が増えて持続時間が長くなり、持続性へ移行して、止まらなくなる)と言われています。しかし、実際には、発作性のまま何年間も経過する人もいます。

心房細動が進行しないようにするには、ライフスタイルの見直しが最も重要です。

甲状腺機能亢進症や睡眠時無呼吸症候群が強く関与している場合は、甲状腺の治療をしたりCPAP治療をすると発作がでなくなることもあります。

また、アブレーション治療では概ね8割の患者さんが治療をした後に心房細動が出なくなったり、極端に減った状態になります。

心房細動のままでもいいの?

脳梗塞のリスクがあれば、抗凝固薬を継続しよう。自覚症状や心不全で困っていなければ、ゆっくり考えよう。

心房細動による問題点は、「脳梗塞のリスク」「自覚症状」「心不全のリスク」が挙げられます。脳梗塞のリスクについては、リスク評価でリスクが高いと判断されたら抗凝固薬の投与が開始されます。

「自覚症状」「心不全のリスク」があれば、積極的に心房細動に対する治療(アブレーション治療や薬物治療など)が行われます。

どうする無症候性心房細動?

「自覚症状」「心不全のリスク」が診察時点でなかった場合は無症候性心房細動と呼ばれます。

無症候性心房細動に対するアブレーション治療は議論されてきました。2024年に日本循環器学会が発表したアップデート版のガイドラインでは、アブレーションの適応が追加されました。

無症候性 再発性の発作性心房細動で CHA2DS2-VASc スコア≧ 3 点の場合に カテーテルアブレーションを考慮する(推奨クラス IIa)

発作性から持続性への移行を予防した報告※1や、リスクの高い症例において予後を改善することを報告※2した論文が参考になっています。

※1: Europace 2021;23:362-369、※2: J Am Heart Assoc 2022;11: e025956

脳梗塞予防の抗凝固薬はずっと飲みますか?

心房細動がある限り、脳梗塞のリスクがあれば抗凝固薬は続けた方が良いでしょう。

心房細動による脳梗塞リスクについてはこちらをご覧ください。

心房細動は、自然に治る病気ではないため命ある限り付き合っていく必要があります。そして、心房細動がある限り脳梗塞のリスクは続きます。脳梗塞のリスクがあると判断された場合、抗凝固薬はずっと飲んだ方がよいでしょう。

抗凝固薬はずっと同じ量でいいですか?

ワーファリンは定期的な血液検査をして用量を調整します。直接作用型経口抗凝固薬(エリキュース、イグザレルト、リクシアナ、プラザキサ)は一定の用量で使用できますが、腎臓の働き、体重、年齢などで減量するかどうかを検討します。

ワーファリンは効果が治療の範囲に入っているかを血液検査で推定する必要があるため、定期的(月に1回)に血液検査を行う必要があります。

一方で、直接作用型経口抗凝固薬(以下、DOAC)は処方のし易さが特徴です。一度、用量が決まるとしばらくはそのまま継続しても問題ないことが多いでしょう。ただし、DOACの用量を決める際に必要となる要素(腎臓の機能、体重、年齢)に変化が出た場合は、用量を見直す必要があります。

具体的に言うと、年を経て腎臓の機能が落ちてきたら、それに合わせて減量した用量で処方します。高度に低下していたら、内服を中止します。腎臓の機能が悪いと薬が体に溜まって、効きすぎることがあるかららです。また、体重が減量した場合も見直しの対象になります。

抗凝固薬が続けられない場合はどうしたら?

リスクを承知で内服をやめる or 左心耳に対する治療を行う。

抗凝固薬で避けて通れないのが出血です。内服することで出血をすることは稀ですが、元々出血する病変を持っている方は出血の量が増える可能性があります。例えば、大腸のポリープや憩室から出血しやすくなるかもしれません。

出血量が多くなると、抗凝固薬を継続することが難しくなります。やむを得ず抗凝固薬を止めることになりますが、脳梗塞のリスクは残ります。心房細動に起因した脳梗塞(心原性脳梗塞)は重篤な状態になる可能性があるので、そちらも避けたいところです。

そもそも心房細動中に血栓ができやすいのは、左心房の一部にあたる左心耳と呼ばれる小さな袋状の構造物のなかです。左心耳に対する治療として、左心耳閉鎖術と左心耳切除術があります。

カテーテルを使用して心臓の内側から左心耳の入り口を塞ぐようにプラグを挿入する方法です。左心耳内に血栓ができても、飛ぶ出せないので脳梗塞・塞栓症が起こりにくくなります。

外科的に心臓の外から左心耳を切除する方法です。他の心臓手術と併せて行われることもありますが、単独で胸腔鏡を使って低侵襲で行われる方法もあります。

アブレーション治療を受けたら抗凝固薬を止めていいですか?

患者さんの状況によります。

脳梗塞リスクが高い方は基本継続で

脳梗塞リスクが高い方は、アブレーション治療がうまくいってもリスクが続くことがあります。どのくらい高ければ抗凝固薬を続けるべきなのか、やめていいのか、はっきりとしたデータはありません。

特に脳梗塞を起こしたことがある方は、脳梗塞再発のリスクが非常に高いので抗凝固薬は続けた方がようでしょう。また、アブレーション治療中に左房の傷みが強いことがわかっている場合も個人的には継続が望ましいと考えます(個人の意見です)。

主治医の先生と相談して決めましょう。

脳梗塞リスクが高くない場合は条件付きで止めることも可能

脳梗塞リスクが高くなくても、抗凝固薬を止めた状態で心房細動が続くと脳梗塞の可能性が出てきます。

脳梗塞リスクが高くない方は、アブレーション治療後に心房細動がないことがはっきりしていたら抗凝固薬の中止が検討できます。脈が乱れていないか、しっかりと自己管理を行いましょう。

不整脈の自己管理は、検脈が基本になります。毎日、30秒間は検脈をして脈が乱れていないか確認しましょう。その際に、時々脈が抜ける感じは問題ありません。一拍一拍ばらばらの間隔かどうかを調べましょう。

そして、毎日しっかり脈が乱れていなければ、抗凝固薬の中止を相談しましょう。心房細動かどうかを自分で知る方法として、アップルウォッチも有効です。

どうしたら良いのか決めかねる時はどうしたらいいですか?

どの治療方針でいくのか、みんな(あなた、家族、医師など)で話し合って決めていきましょう。もちろん、一度決めた方針も後で修正可能です。定期的に見直しましょう。

医師としては医学的情報をお伝えし一緒に話して意思決定をしていきますが、なかなか自分では決めきれないと言われる方もいらっしゃいます。

大まかに以下のような方針が考えられます。悩んだら参考にしてみてください。

  • 心房細動と言われたら:ライフスタイルを見直す。特に睡眠時無呼吸症候群の合併が多い。
  • 脳梗塞のリスクがある:抗凝固薬を内服する
  • 自覚症状で困っている:不整脈に対する治療を行い、正常のリズムを維持する。するならアブレーション治療がおすすめ。
  • 心不全になる:正常のリズムの維持を目指す。するならアブレーション治療がおすすめ。
  • 全く症状がない:脳梗塞の予防をベースに、ライフスタイルの見直しを徹底します。アブレーション治療については慎重に検討されます(リスクとベネフィット)。
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