良い睡眠は健康の維持に重要です

睡眠は健康に不可欠な要素であり、十分な睡眠をとることが重要です。睡眠が十分でないと、多くの慢性疾患を引き起こすリスクとなります。

十分に良い睡眠をとることができれば、病気の予防にもなりますし精神的な安定をもたらします。この項では睡眠について解説します。

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睡眠サイクルとは?

睡眠サイクルと睡眠ステージ

睡眠は、睡眠ステージが変化しながら進んでいきます。睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠の大きく分けて二つの段階があり、ノンレム睡眠は4つのステージに分けられます。つまり、睡眠ステージは5段階あります。この5段階が睡眠サイクルを作ります。

眠りにつくとまずはノンレム睡眠から始まります。ステージ1、2、3と経過し、一気に深い眠りへ向かいます。その後に眠りは浅くなり、レム睡眠へ移行します。このサイクルは約90分程度で繰り返されます。サイクルは3〜5回繰り返しますが、徐々に深い眠りが減り、ノンレム睡眠が増えていきます。

ノンレム睡眠

ノンレム睡眠中は、生理的活動が低下していきます。

筋肉の活動、心拍数、呼吸数などが減少し、脳の電気的活動は遅くなり、成長ホルモンは分泌されます。脳や体が疲労から回復する時間です

ノンレム中のステージで内容が変わります。

ステージ1
(N1)
眠りはじめの最も浅い睡眠です。通常10分程度とされています。生理的活動は徐々に低下してきます。筋肉も力が抜け始めます。
眠りは浅いのですぐに目を覚ますことができます。
ステージ2
(N2)
まだ浅い睡眠です。ステージ1と同様に生理的活動は低下し、筋肉はより力が抜けます。
体温が下がって、目の動きはとまります。
ステージ3、4
(N3)
ノンレム睡眠の最終段階です。最も深い眠りです。心拍数や呼吸数は最低レベルまで低下します。筋肉はかなり弛緩しています。眠りが深いため、起こされても目が覚めにくい時間です。
1周目の睡眠サイクル中に、20〜40分間ほど続きます。サイクルが繰り返されるうちに短くなっていきます。

レム睡眠

睡眠中ですが脳は活発に働いています。それに伴って眼球が急速動いているためレム(REM:rapid eye movement)睡眠と呼ばれます。

1周目のノンレム睡眠の後に見られるためステージ5とされます。

記憶の整理や定着が行われます。全身の力は抜け、体が休まっている状態です。脳は活動しているため、夢をみる傾向にあります。

睡眠サイクルが繰り返されるうちに長くなっていきます。

睡眠をとることの意味は?

睡眠の役割

睡眠は身体および精神的な状態の回復・安定に重要な役割を担っています。わかっている睡眠の主な役割は以下のようのものがあります。

  • 脳を調整する(記憶の整理・定着、感情の制御)
  • 疲労回復・細胞の修復
  • 免疫力をアップさせる
  • 自律神経の調整と心臓への影響

脳を調整する(記憶の整理・定着、感情の制御)

睡眠中に脳は新しい経路を形成し、情報を処理します。覚醒中に取りいれた情報を整理することで、記憶として定着させます。大事な情報を整理するだけでなく、不要なものを消したりします。十分に睡眠をとることは記憶や学習の効率を上げます。

脳の活動による老廃物を取り除くことで、脳の機能を保ちます。

睡眠中に脳は感情の調整も行います。ストレス状態では、睡眠中に感情や情報が調整されます。睡眠障害は、精神的な状態に良くない影響を与えます。逆に、過度なストレスは睡眠障害を引き起こします。

疲労回復・細胞の修復

睡眠中は疲労した体が回復する時間です。ホルモンバランスが調整され、体に保護的に働きます。障害された細胞が修復される時間でもあります。筋肉や組織の成長につながります。

免疫力のアップ

健康を維持するための免疫力は睡眠により効果が上がります。睡眠中に免疫システムが活発になります。病気やストレス状態では、睡眠が免疫システムに及ぼす影響は重要です。

自律神経の調整と心臓への影響

自律神経は、交感神経と副交感神経のバランスで調整されます。交感神経は体が活動モードになるように働きかけます。逆に副交感神経は体が休息モードになるように働きかけます。交感神経と副交感神経は、バランスをとりながらどちらかが優位になったり、逆になったりを繰り返しています。

交感神経が優位な状態になると、血圧、心拍数、呼吸数、体温が上昇し代謝が活発になります。副交感神経が優位な状態になると、血圧、心拍数、呼吸数、体温は低下します。体を休息モードにすることで、疲労した臓器をリセットさせようとします。

睡眠中は副交感神経が優位になり、血圧、心拍数、呼吸数、体温が低下します。

心臓は1日10万回くらい収縮と弛緩を繰り返す働き者の臓器です。日中は交感神経の影響で活発に働きますが、夜間は副交感神経の影響で休息モードになります。休息をとることで、また活発に働くことができます。

睡眠障害があると、交感神経は睡眠中も活発に働き続けます。それにより心臓が疲労回復する時間が取れず、興奮した状態が続くことで心臓の機能が低下したり、不整脈が出やすくなります。

十分な深い睡眠がとれないときの影響は?

睡眠不足があると、睡眠中の大事な機能が損なわれます。それにより身体的な影響により慢性的な疾患が発生しやすくなります。睡眠不足は、2型糖尿病、心血管疾患、肥満といった身体的な影響とうつ病などの精神的な影響が起こる可能性があります。

心臓や血管への影響

睡眠障害があると、高血圧、脳卒中、虚血性心臓病(狭心症、心筋梗塞)そして不整脈が発生しやすくなります

睡眠障害の一つである睡眠時無呼吸があると、多くの心血管疾患のリスクが高くなることがわかっています。睡眠中は血圧や心拍数は低下し、心臓や血管を休める方向に向かいます。睡眠障害により、血圧や心拍数は高い状態が維持され、高血圧や不整脈の発生に関わります。

睡眠時間を確保し、質を改善させることは血圧を低下させ、不整脈を減少させることに役立ちます。

糖尿病

睡眠不足は2型糖尿病の発症リスクが増加すると言われています。

睡眠障害によりインスリン(血糖値を低下させるホルモン)の調整が悪くなるようです。睡眠時間を確保し、睡眠の質を改善させることで、糖尿病のコントロールが改善する可能性があります。

肥満

睡眠不足は、食欲を調節するホルモン(レプチン、グレリン)のバランスが崩れ、過食傾向にかたむきます。さらに、成長ホルモン低下やコルチゾール上昇、代謝の低下などにより肥満傾向に向かいます。

肥満は閉塞性無呼吸を引き起こすため、さらに睡眠不足を増悪します。

集中力・記憶力の低下

睡眠中に記憶が定着するため、睡眠不足により長期的な記録力が低下します。また、脳の疲労が蓄積すると、目が覚めていても集中力は低下し、短期的な記憶も低下します。

気分障害やうつ病

睡眠不足になると、感情の制御が難しくなることがあります。前向きな気分を保つことができずに、抑うつ的な気分になります。抑うつ的な状態が長く続くとうつ病へ移行する可能性もあります。睡眠障害が抑うつ気分にしますが、抑うつ状態も睡眠生姜をきたします。

気分が前向きになれない時は、深い質の良い睡眠が足りていないのかもしれません。

睡眠を妨げる原因は?

睡眠不足にある原因はどんなものがあるのでしょうか?睡眠障害をきたすいくつかの代表的な原因について説明します。

不眠症

いわゆる不眠症とは、眠りたいと思って、十分な睡眠時間を確保しているにも関わらず、眠りにつきにくかったり、長く眠ることができない状態です。不眠症の原因には以下のようなものがあります。

不眠の原因
  • 不安・ストレス:不安や過度なストレスは睡眠を妨げます
  • 精神疾患(こころの病気):意欲が低下し、睡眠欲も低下します。
  • 加齢:加齢により睡眠の質が低下することが知られています。
  • 身体的な問題:心不全などによる息苦しさや関節痛の痛みなどで眠れない
  • 内服薬:一部の薬は眠りを妨げる可能性あります。
  • カフェイン、ニコチン:覚醒作用があります。避けましょう。
  • シフト勤務:概日リズムが崩れます
  • 環境:音や光など

まずは、より良い睡眠を手に入れるためのヒントを参考に行動を見直してみましょう。ストレスを和らげる方法も確認しても良いかもしれません。

それでも不眠症の改善がない場合は、睡眠導入剤や抗不安薬などを考慮します。不眠症がうつ病の症状の一部である可能性もあるので、主治医に相談しましょう。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群になると、眠っている間にいびきを立てたり、一時的に呼吸が止まったりします。睡眠の状態は悪くなり、睡眠時間は長くても十分な深い睡眠が取れていないことになります。その結果、昼間に過度の眠気を自覚したります。

睡眠時無呼吸症候群のほとんどは閉塞性睡眠時無呼吸症候群であり、コントロールの難しい高血圧、心房細動などの不整脈、そのほかの心血管病などいろいろな合併症を引き起こすことがわかっています。

閉塞性無呼吸

閉塞性無呼吸

睡眠中に筋肉が弛緩することで、舌や軟口蓋が背中側に落ち込んで気道を塞いだ状態です。

一部でも空気が通過できたら、空気が振動していびきになります。完全に気道が閉塞してしまうといびきは消失し、息が吸えない状態になります。

ナルコレプシー

ナルコレプシーは過眠症のひとつで、日中に突然強い眠気で眠ってしまい(睡眠発作)、全身の力が抜けてしまうような発作がでたりする病気です。眠気を自覚する前に、眠ってしまうこともあり気づいていないこともあります。

睡眠や精神科の専門機関で検査を受け診断されます。覚醒に関与するオレキシンと呼ばれる神経伝達物質の働きが関わっているようです。

むずむず脚症候群

むずむず脚症候群はレストレスレッグ症候群(RLS: restless leg syndrome)とも呼ばれ、脚の不快感(痛みやかゆみ、這うような感じ)により脚を動かしたくなる症候群です。安静にしていたり動かないと症状が出ることがあります。症状を緩和させるには、歩いたりストレッチすることが効いたりします。

むずむず脚症候群の管理

以下のような行動が症状を軽くする可能性があります。

  • よい睡眠をとるように調整する
  • 運動:運動不足が症状を悪くする可能性がある
  • マッサージ、温浴:マッサージや温浴で脚を刺激することで改善されることがあります

改善がない場合は、内服薬による治療も考慮されます。

質の良い睡眠を手に入れましょう

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