自分でできる!心不全を悪化させないライフスタイル

心不全は、一度診断されたらずっと付き合っていくことになります。しかも、心不全は進行するやっかいな病気です。

心不全では医師から、内服や食事、運動の指示があります。それをしっかりと実施することは、心臓を長持ちさせ、症状を悪化させないことにつながります。自分で心不全についての意識をしっかりもって、長く続けられる自己管理(セルフケア)を探りましょう。

セルフケアは、セルフケア-メンテナンス(処方の服用、身体活動、食事など)、セルフケア-モニタリング(定期的な体重測定など)、セルフケア-マネジメント(必要に応じた利尿剤の変更など)などを統合した包括的な概念です。

この項では、心不全を自分で管理する方法(セルフメンテナンス)について記載しています。

この記事は、以下の論文を参考にしています。Eur J Heart Fail. 2021 Jan; 23(1): 157–174.

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最適な栄養状態を維持する

肥満を解消する

肥満があることで、心不全症状が悪化したり、心臓の機能に悪い影響を与えることがあります。運動機能低下や生活の質低下に関係していることがあるため、体重の減量を検討しましょう。専門の栄養士の指導を受けていれば、指示された食行動を実施しましょう。

一般的には、動物性の食品や砂糖を控え、植物性の食品(果物、野菜、種子、ナッツ、マメ科植物、全粒穀物)が勧められます。動物性の食品をとる場合は、肉よりも魚や発酵乳製品を選択しましょう。

食事の内容と併せて、摂取カロリーも意識します。最近では、スマートフォンのアプリで食事内容のカロリーが推定できるものがありますので、試してみましょう。

意図せずに急に体重が減少してきた時は、心不全の進行による悪液質の兆候である可能性があります。主治医に報告しましょう。治療法の最適化、運動や栄養のアドバイスを受けましょう。

水分について

うっ血の症状を和らげるために、水分摂取量は1〜1.5リットル程度に制限されます。夏に汗をいっぱいかくような、水分喪失が多い場合は水分摂取を増やすか利尿剤を減らすことを考慮します。

水分が過多になっているかどうかは、体重を毎日測定することで確認します。

塩分制限する

塩分の過剰な避けてください。一般的には、1日5g未満に制限することが勧められます。

食事を作る時にできるだけ塩を加えないようレシピを工夫し、塩分の多いスナック菓子などは制限しましょう。特に日本食は塩分が多めの調味料(みそやしょうゆなど)が使用されます。栄養士の指導を忠実に守りましょう。

アルコール制限する

アルコール摂取は多少は認められていますが、できるだけ飲まないにこしたことはありません。特にアルコールによる心筋症の方は、絶対的に禁酒です。

また、アルコールは不整脈の原因となりえます。心不全の方に不整脈が発生することで、心不全が急に悪くなるがあります。アルコールの摂取で睡眠の質が低下することも懸念されます。

適度な運動を行う

適度な運動は、心肺機能を改善し生活の質を向上させ、さらに心不全の入院を減らす可能性があります。できるだけ定期的な運動習慣を心がけましょう。有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることで効果が期待できます。

ただし、どの程度の運動が安全なのかを見極める必要があります。過度な身体活動は心不全症状を発生させる可能性があります。どういった運動が最も適しているかは個人ごとに異なりますので、心不全を治療してくれた施設に聞いてみましょう。

一般的には、中くらいの強度の有酸素運動を週に150分または高強度の有酸素運動を週に75分をベースに、週2、3回の全身の筋肉を刺激するような筋力トレーニングをすることが勧められます。

薬をきちんと服用

心不全の治療で使用される薬は、きちんと内服することが極めて重要です。

まずは、どの薬がどのように心臓に効いているかを薬剤師からの説明を受けましょう。

きちんと服薬できないと、心不全が増悪しやすくなります。

薬の影響で心不全が落ち着いていても、服薬を中断することで次は効きにくなることもあります。

もし、自分だけでは管理が難しい場合は、家族や周囲の人の協力を得ましょう。また、ピルケースやスマートフォンのリマインダーなどのツールを使用も検討してみましょう。

薬の作用も知っておこう

心不全の薬は心臓を保護する効果の一方で血圧を下げる効果を有することがあります。それにより疲労を感じることがあります。内服を続けることで徐々に改善することがあります。

血圧が低くなりすぎると、めまいや立ちくらみを感じることがあります。症状がでた場合は、寝た状態で足を高くすることで改善しますが、それでも改善がない場合は主治医に連絡しましょう。また、立ち上がる時にゆっくり立つことで症状が感じにくくなることもあります。

利尿剤を使用している場合、服用後にしばらく尿量が増え、行動が制限されることもあります。内服のタイミングを工夫したり、もし不要であれば減量・中止も検討します。

そのほかの副作用については、薬剤師の話を確認しましょう。副作用があると思われる場合は、主治医にご連絡ください。

心理的状態を安定させる

「心不全」、「治らない」、「進行する」などと言われると、落ち込んだり、前向きになれなかったりします。症状があることで、気分が落ち込み不安が強かったり、抑うつ的な気分になることもあります。

不安や懸念がある場合は、家族や友人、看護師や医師に気持ちを伝えましょう。

気持ちが落ち込んでいても、身体的に活動することで楽になることもあります。さらに、リラックスした状態を作るための方法がいくつかありますので試してみてもいいかもしれません。

それでも、改善がなければカウンセリングなどで専門的な評価や治療も検討されます。

良質な睡眠をとる

心不全の状態により、夜間に息苦しさを感じたり、トイレに頻繁にいったりすることで睡眠が妨げられることがあります。さらに、不安などの影響で、寝つきが悪くなったり、途中で目が覚めてしまうこともあります。

睡眠の質が落ちることで、翌日の気分が落ち込んだり、身体活動がおっくうになったり、不整脈が増えたりするなど心不全に悪い影響を与えます。睡眠の質低下が、心臓に悪い影響を及ぼすことが懸念される場合は睡眠導入剤の使用を検討します。

就寝中のいびきや無呼吸を指摘されていたら、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。

それにより心不全のコントロールが難しくなります。

いびきや無呼吸があれば、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けましょう。そして、必要があれば治療(CPAP)を受けましょう。

夜間の発作的な息苦しさが続くようなら、心不全のコントロールが悪くなっていることが想定されます。かかりつけ医を受診し、評価を受けましょう。

旅行とレジャーに適応する

心不全があるからといって過度に行動を制限する必要はありません。症状の状況や日頃の身体活動に応じて、旅行やレジャー活動を検討しましょう。ただし、旅行の計画が持ち上がったら、まずは主治医に相談しましょう。

長い時間移動する必要がある場合、移動手段としては飛行機よりも電車・新幹線の方が安心です。症状が強く出た場合に、途中で降りることができるからです。

長時間同じ姿勢だと、足の静脈で血栓ができることがあります。特に心不全の方は、血栓ができやすいので弾性ストッキングを履いたり、定期的に足を動かしたり歩いたりしましょう。

海外に旅行する場合は、旅行保険をきちんと取得し、滞在先で対応可能な医療機関をリストアップしましょう。航空会社に知らせておくことも考慮してください。

ペースメーカーや植込み型除細動器が植え込まれている方は、手帳を携帯しましょう。飛行機に乗る際は、必ず提示してください。

重症の心不全状態であれば、自動車運転はしないことをお勧めします。

予防接種と感染の予防

インフルエンザや肺炎に感染すると心不全の急激な増悪が起こることがあります。まずは手洗いなどの感染予防を徹底し、インフルエンザと肺炎球菌の予防接種を受けましょう。

肺炎球菌のワクチンは、65歳になると5年毎の接種が勧められています。しかし、心不全などがあり肺炎球菌の感染を予防したい場合も接種可能です。かかりつけ医にご相談ください。

禁煙する

喫煙は電子タバコも含めて、心臓にとってかなりの悪影響を及ぼします。

喫煙はやめるべきです。禁煙するためのアドバイスやサポートのため禁煙外来に相談しても良いでしょう。

また、家族や友人にあなたをサポートしてもらうようお願いしてください。

性行為

心不全が安定している場合は、性行為が過度の症状を引き起こさない限り問題ありません。

心不全があると勃起不全が起きやすいようです。しかし、勃起不全に対する改善薬(バイアグラなど)は強く副作用がでることがあるため使用することはできません。

心不全増悪のサインがあった

心不全の増悪が懸念される場合は、主治医に対応を相談します。

一部の心不全患者さんは、セルフモニタリングで得た情報(症状や体重など)から利尿剤の調整をしたり、活動量や水分摂取の調整をしたりすることがあります。

【心不全増悪のサインがあった時の適切な対応】

  • 医療提供者に連絡
  • 利尿量を調整
  • 活動レベルを調整
  • 水分と塩の摂取量を減らす

利尿剤の調整

利尿剤は尿量を増やすことで体にたまった水分を体の外にだす効果があります。

うっ血の症状が増悪した時や体重が設定した値を超えた時に、利尿剤を追加で内服するように医師から指示がでることがあります。指示通り内服し、改善が見られなければ主治医に早めに連絡し、診察を依頼しましょう。

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