心房細動に効くライフスタイルの改善

心房細動の診療の柱は、抗凝固薬による脳梗塞予防と心房細動に対する治療(レートコントロール、リズムコントロール)ですが、最近では、ライフスタイルの見直しの重要性が言われる様になりました。

修正可能なライフスタイルの見直しは、心房細動に対する治療で非常に重要な役割を担っていますが意外と知られていません。

ライフスタイルの改善は心房細動のコントロールを容易にするだけでなく、他の心血管病の予防に役立つと言えます。ここでは、見直すべきライフスタイルについて説明します。

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肥満の解消

心房細動の原因の一つに肥満が挙げられます。肥満は強力に心房細動を引き起こすことが多くの研究から報告されています。

それらの報告は、BMIが30以上で肥満と定義されていますが、日本ではBMI ≧ 25で肥満とされます(厚生労働省)。

BMI(body mass index):身長と体重から計算される肥満ややせの判定に使用される指標

BMIの計算(あなたの肥満度は?)

日本肥満学会の基準

  • 低体重(やせ):18.5未満
  • 普通体重:18.5以上25未満
  • 肥満:25以上

BMI 22になるときの体重が標準体重とされ、病気になりにくいとされています。

25を超えると、生活習慣病のリスクが上昇します。

肥満の状態になると、心房細動の主戦場である心房の伝導が不安定になったり、構造的な変化が起きることが報告されています。さらに体に悪影響を及ぼすケミカルメディエイターも増えます。

肥満解消のメリット

肥満のある患者さんを対象に、体重減少と心房細動の関係を調べた報告は多く発表されています。そのほとんどは体重を減らすことで心房細動の頻度が減ったり症状が改善するという結果です。

具体的には、体重を10%減少させて維持することができると心房細動を抑える効果がある様です。元の体重にもよりますが、体重10%減少またはBMI 25未満を目標に肥満の解消を目指しましょう。

運動習慣をつくろう

運動不足は心房細動が発症するリスクになったり、心房細動の頻度を増やす要因になります。

どれくらい運動したらいい?

アメリカ心臓病学会(AHA)は心血管の健康のために、下記のいずれかを行うことを推奨しています。

  • 中くらいの強度の有酸素運動を週に150分
  • 高強度の有酸素運動を週に75分

ヨガも効果がある

ヨガではゆっくりと呼吸をすることで心拍数を抑えたり、心を落ち着かせたりする効果があります。ヨガの心房細動に対する効果も報告されています。心身のストレスが心房細動に影響している様な場合は、特に効果が期待できると思います。

運動はやればやるほど良いのか?

運動はすればするほど効果があるのでしょうか。実は、高強度の運動をやり過ぎると逆に心房細動の頻度が増えることも報告されています。マラソンランナー、プロのサイクリストや競技スポーツを長年行うことで心房細動の発生が増えることもわかっています。

生きがいや生活のために高強度の運動が必要な方もいらっしゃいますが、そうでなければ心房細動発症の観点からは適度な運動にとどめることが勧められます。

心房細動に対する運動習慣のメリット

上記の運動を行うことで心房細動のリスク低下、症状の改善が報告されています。

  • 心房細動の発症を抑制できる
  • 心房細動がある方は、頻度を減らすことができる
  • 症状や生活の質を改善するこができる

いびき・睡眠時無呼吸

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中のいびきや短時間の呼吸停止・低呼吸を繰り返す睡眠障害です。寝ている間に低酸素状態になったり、息を吸おうとしても吸い込めないことで胸の内側に陰圧がかかったりします。睡眠時無呼吸症候群は心血管病発症の強力なリスクとして知られています。

睡眠時無呼吸症候群と心房細動

心房細動の発症とも非常に密接に関連しています。睡眠時無呼吸症候群は、無呼吸・低呼吸の頻度などにより重症度が決まります。重症であればあるほど、心房細動が発生しやすく再発も多くなります。

そのため、心房細動の患者さんには睡眠時無呼吸症候群がないか聞き取りをすることが強く推奨されています。

また、睡眠時無呼吸症候群は肥満の方に起こりやすいですが、肥満がなくても発生することがあります。特に日本人は骨格的に下顎が小さいことが多く、噛み締めて下顎が後ろ側の入り込むことで空気の通り道が狭くなることがあります。

CPAP治療は心房細動の再発を減らす

睡眠時無呼吸症候群に対するCPAP治療の効果は以下のとおりです。

  • いびき・無呼吸の改善
  • 睡眠の質の向上
  • 日中の眠気の改善
  • 高血圧や狭心症など心血管病に良い影響
  • 心房細動の再発予防

重症の睡眠時無呼吸症候群がある場合、CPAP治療は心房細動の再発を減らすことがわかっています。

生活習慣病・食生活の治療

高血圧や糖尿病は心房細動の発生に影響を与えています。血糖値や血圧をきちんとコントロールすると心房細動の発生を減少させることが期待できます。

心房細動を指摘されたら、食生活を見直しましよう。間食や夜食をしているようでしたら、これを機会に辞めることをお勧めします。

飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が少なく、果物、野菜、全粒穀物が豊富な食事を心がけましょう。発酵食品も良いかもしれません。肥満の解消にも役立ちます。

栄養バランスの良い食事は、病気になることを予防します。ぜひ実践しましょう。

アルコールを制限する

アルコールが心房細動の発生や維持に関連していることは間違いありません。

以前は多少のアルコールはリラックス効果が期待されていましが、最近ではアルコールはできるだけ飲まない方が心血管にとって良いことがわかってきました。心房細動に関しても、アルコールを止めることで発作が減少することが報告されています。

心房細動を指摘されたら、アルコールの接種はできるだけ控えるように努力しましょう。

タバコを辞める

喫煙も心房細動の発生に関わっています。タバコ自体が心房細動に影響するだけではなく、長年の喫煙で肺気腫になるとさらに心房細動の発生頻度が増えます。

心房細動アブレーション治療後の再発が増えるという報告もあります。

タバコは百害あって一利なし。すっぱりとタバコをやめましょう。近くの禁煙外来をしているクリニックに相談してもよいでしょう。

ストレスに対応する

身体的および精神的ストレスは心房細動のトリガーになります。しっかりと休息し、リラックスすることは身体的にも精神的にも良い影響を及ぼします。

家事や仕事にいきづまる前に、気分の良くなるイベントの予定をいれましょう。

携帯電話を置いて、深呼吸したり瞑想の時間を設けましょう。

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