発作性上室頻拍について:症状から治療まで

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発作性上室頻拍とは

発作性上室頻拍は、心臓の上部(心房と房室結節など)で起こっている規則的な速い脈(頻脈性不整脈)です。通常の心拍数は、1分間に約60〜100回は駆動していますが、発作性上室頻拍では1分間に120〜220回拍動します。

発作性上室頻拍の症状

発作性上室頻拍の症状には、動悸やめまいといった症状があります。

動悸
動悸

脈が通常よりも速くなり、心臓の鼓動を感じる症状です。脈拍が非常に速くなると、動悸を通り越して胸痛(胸の痛み)を感じる方もいます。

この不整脈の特徴は動悸は突然発症し、突然止まるです。

めまい
めまい

心房細動により非常に脈拍が速くなったり、逆に急に遅くなったりすることで十分な血液が送り出されなくなると、脳に十分な酸素が供給できずに目の前がくらくなったり、ふらっと感じたりします

場合によっては、失神(一時的に意識がなくなって倒れる)することもあります。

短い発作の場合、病院に到着した時には止まっていて診断がつきにくいこともあります。まれにパニック発作と誤診されることもあります

発作の前駆症状

発作性上室頻拍の発生には、期外収縮(上室期外収縮心室期外収縮)が関与しています。

期外収縮の症状(一瞬胸がドキッとなる感じ)が続いた後に動悸が始まることがあります。この前駆症状がわからないこともあります。

診断は心電図

発作性上室頻拍の診断は、心電図にて行います。

  • 幅の広くないQRS波形が規則的かつ高頻度に見られます。
  • P波は確認できる場合とできない場合があります。

発作時にしか診断をつけることができません。発作の持続が短い場合は、いろいろな種類の心電図を駆使して診断に努めます。

発作性上室頻拍の種類

典型的には以下の3種類に分類されます。

  • 房室結節リエントリー性頻拍
  • 房室リエントリー性頻拍
  • 心房頻拍
房室リエントリー性頻拍
房室結節リエントリー性頻拍

房室結節を介した「リエントリー型」の不整脈の一つ

房室結節を通過する時に、通常の速度で通過する経路ゆっくり通過する経路を持っている場合に起こりえます。

その二つの経路を使って電気信号がクルクル旋回(リエントリー)することで発生します。

房室結節リエントリー性頻拍
房室リエントリー性頻拍

房室結節を介した「リエントリー型」の不整脈

心房と心室を電気的につなぐ線維(副伝導路)を持っている方におきます。

副伝導路と房室結節を使って電気信号がクルクル旋回する回路が成立します。

心房頻拍
心房頻拍(局所型)

「局所型」不整脈が心房内で連発

心房のどこかから、電気信号が連続的に発生された状態です。

心房頻拍のアブレーション治療は別のところで説明します。

【その他に鑑別を要する不整脈】

上記の3つの不整脈以外にも下記のような不整脈も鑑別に挙げられます。

  • 洞性頻脈
  • 洞結節近くのリエントリー性頻拍
  • 不適切洞頻脈
  • 多源性心房頻拍
  • 接合部頻拍

発作性上室頻拍の原因は?

発作性上室頻拍のうち、房室結節リエントリー性頻拍や房室リエントリー性頻拍はリエントリーを形成する回路を持っていることで発生します。うまれつき性質を持っている可能性があります。

発作性上室頻拍が起きやすくなる要因

発作性上室頻拍の起きやすさはいろいろな要素により影響を受けます。

  • 精神的、身体的ストレスや疲労
  • 薬の副作用
  • 血中電解質異常(血液中のナトリウム、カリウム、マグネシウムやカルシウムなど)
  • 飲酒
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 加齢
  • ホルモンの影響など

発作性上室頻拍の治療は?

発作性上室頻拍の治療は、発作が起きている時の急性期の治療発作が起きないようにする慢性期の治療に分けて考えます。

急性期の治療

  1. 深呼吸や息こらえなどで、自分で止めることができる場合もあります
  2. リエントリーの伝導を途絶させるための抗不整脈薬を使用します
  3. 抗不整脈薬で止まらずに症状が強い場合は、電気ショックを行うこともあります
STEP
自分で止めてみる

バルサルバ手技

発作性上室頻拍を自分で止める方法です。

大きく息を吸って、吸ったところで息を止めて、お腹にぐーっと力を入れます。数秒間我慢して、ハーっと息を吐きます。

加えて、冷水を飲んだりすることで止まることがあります。

STEP
薬で止める

電気信号がくるくる旋回している回路を遮断するような薬を使用します。

内服の場合

効果が出るまでに20〜30分くらい

注射の場合

すぐに効果がでます

STEP
最終手段は電気ショック

心臓に大きな電気刺激を与えて、乱れた電気信号を停止させる方法です。不整脈が停止し、自分の正常なリズムを取り戻す時に使用します。

症状が強く薬の治療が無効な場合は、電極による不整脈の停止を試みます。

慢性期の治療

発作性上室頻拍は、多くの場合で動悸発作を繰り返します。再発を抑える方法には以下の3つがあります

  • 抗不整脈薬
  • アブレーション治療
  • ライフスタイルの見直し

抗不整脈薬

発作が出にくくする薬を用います。抗不整脈薬と呼ばれる薬です。

不整脈を抑える効果は不安定であったり、強すぎで副作用が出たりすることもあります。できれば漫然と内服するのは避けたいところです。

アブレーション治療

カテーテルで心臓の筋肉にヤケドを作る治療です。

発作性上室頻拍を根治的に治療できる可能性があります。薬よりも効果があります。

繰り返す発作がある場合は、アブレーション治療をお勧めします。

ライフスタイルを見直そう!

バランス良い食事

飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が少なく、果物、野菜、全粒穀物が豊富な食事を心がけましょう。発酵食品も良いかもしれません。

適度な運動と健康的な体重を維持

息が上らない程度の持続的な運動(有酸素運動)を可能であれば、30分間行うことを目標にしましょう。

肥満は多くの心臓病や生活習慣病のリスクを高めます。

コレステロールのコントロール

高血圧や高コレステロール値は、心臓病のリスクを上げます。心臓の負担を取るためにもライフスタイルの見直しに努めましょう。

ストレスのコントロール

精神的および身体的ストレスは、不整脈を増やし心臓に悪い影響を与えます。不必要なストレスを避けるように心がけましょう。

瞑想やヨガなども効果があるでしょう。

アルコールを制限

アルコールと不整脈は強く関係しています。不整脈を持っている方は、アルコールはできるだけ摂取しないほうが良いとされています。

禁煙

喫煙習慣も心臓への負担を増やし、不整脈に影響します。禁煙を強く勧めます。

近くの禁煙外来をしているクリニックに相談してもよいでしょう。

睡眠時無呼吸症候群の評価を

睡眠時無呼吸症候群は不整脈の原因となります。さらに不整脈以外にも、多くの病気の原因になります。

いびきや睡眠中の無呼吸が指摘されたことがあれば、一度は必ず検査を受けましょう。重症度に応じてCPAP治療などを行います。きちんと治療をしないと予後が悪いこともわかっています。

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