心房細動を見る上で大事な4つの視点

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心房細動を評価する4つの視点

心房細動の状態は時間の経過と共に変化し、患者さんそれぞれの状態にも影響を受けます

心房細動には「重症」や「軽症」といった分類はありません。しかし、心房細動の状態を示す4つの指標があり、それぞれの程度で心房細動の状態を表現することができます。

心房細動の状態を確認する4つの視点
  1. 脳梗塞のリスクは高いか?
  2. 症状でどのくらい困っているか?
  3. 心房細動の出現頻度・持続時間はどのくらいか?
  4. 心房に影響を与える要素をどれくらい持っていますか?

心房細動の患者さんを見た時に、この4つの視点をそれぞれ評価していきます。

脳梗塞のリスクは高いか?

心房細動による脳梗塞予防についての一般的な方法はこちらを確認してください。

重要なことは脳梗塞のリスクがあるかどうかです。そして、リスクがあれば抗凝固薬の内服が開始となります。

チェック1:脳梗塞リスクの評価

心房細動治療の第一歩。脳梗塞リスクの評価です。最も有名なリスク評価はCHADS2スコア(チャズ スコア)と呼ばれるものです。

CHADS2スコア

以下の項目がある場合、心房細動に関連した脳梗塞のリスクが上がります。点数が上がるほどリスクは高くなります。1点でもあれば脳梗塞予防を考慮しましょう

項目点数
心不全・心機能低下がある
高血圧がある1
年齢が75歳以上である1
糖尿病がある1
脳梗塞や一過性脳虚血発作がある2

あなたの点数は何点ですか?計算してみましょう。

CHADS2スコア以外のリスク因子もわかってきています。

CHADS2スコア以外にも脳梗塞発症リスクがあります!

CHADS2スコア以外の脳梗塞リスク
  • 年齢 65歳以上
  • 腎臓の機能が落ちている
  • 何らかの心筋の病気(心筋症
  • 進んだ動脈硬化(心筋梗塞、大動脈のプラーク、下肢の動脈硬化)
  • 持続性の心房細動
  • 体重が少ない(50kg以下)
  • 左心房が拡大している

CHADS2スコアやそれ以外のリスクが1つでもあれば、脳梗塞の予防を考慮しましょう。

2024年のガイドラインでは、HELT-E2S2スコアによる脳梗塞リスク評価も示されるようになりました。

チェック2:抗凝固薬の選択

心房細動の脳梗塞予防で、第一に選択される治療法抗凝固療法です。抗凝固薬と呼ばれる、血液が固まりにくくする薬を使って心房に血栓ができるのを予防します。

抗凝固薬の種類

以前から使用されている抗凝固薬

  • ワーファリン

直接作用型経口抗凝固薬(DOAC; direct oral anticoaglants)

  • プラザキサ®
  • イグザレルト®
  • エリキュース®
  • リクシアナ®

直接作用型経口抗凝固薬が勧められる理由

  • 新しい抗凝固薬は使いやすい
  • 脳梗塞の予防効果はワーファリンより優れている
  • 懸念される出血に関しては、ワーファリンと同等である

チェック3:抗凝固薬処方の注意点

基本的には直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の処方を行います。DOACの処方を開始し、継続する際に注意することがあります。

DOACの開始・継続のチェックポイント
  • 腎臓の機能は?
  • 出血のリスクは?
  • 同じ用量の継続で良い?

腎機能は?

まず注意するのは腎臓の機能です。腎臓の機能が悪い方が、腎排泄型の薬を飲むと薬が体内に残りやすくなります。それにより、思ったよりも血液をサラサラにする効果が強く出て出血のリスクになります。

DOACは4種類ありますが、腎臓の働きに応じて減量する基準が設けられています。また、腎臓排泄の割合が大きい薬であれば、腎臓の働きが落ちていても処方しやすいため、種類を決める際に考慮します。

高度に腎臓の機能が低下している場合は、DOACは処方できないためワーファリンを処方することになります。

出血のリスクは?

次に注意するのは出血のリスクです。

抗凝固薬は血栓を作りにくくする代わりに、出血を止めにくくする作用もあります。そのため、習慣的に出血する病気であったり、命に関わるような出血のリスクがある方には処方を慎重に行う必要があります。

出血のリスクを評価する方法の一つにHAS-BLEDスコアがあります。スコアが高いと重大な出血のリスクが上がるとされています。3点を超えていれば、注意が必要です。

HAS-BLEDスコア

また、習慣的に出血する病気の方は抗凝固薬の開始で、出血量が増える可能性があります。その場合、抗凝固薬以外の脳梗塞予防を検討することもあります。

同じ用量の継続で良い?

抗凝固薬の内服量については定期的な見直しが必要です。

心房細動と付き合っているうちは、抗凝固薬による脳梗塞予防は続いていきます。抗凝固薬を開始された後、体の状態も変化していきます。年齢により徐々に腎機能が低下することもあり、気がついたら抗凝固薬を減量する基準となっていたり処方してはいけない基準まで下がっていることもあります。

一方で脳梗塞のリスクなかった方も、経過とともにリスクがあがっていることもあります。心房細動を持っているのであれば、定期的に診察を受ける必要があります。

抗凝固薬を安全に使用するために継続的なリスクの評価が必要

チェック4:抗凝固薬以外の脳梗塞予防の検討も

抗凝固薬がどうしても飲めない場合や、飲んでいても脳梗塞になる場合には左心房内に血栓ができにくくする方法を検討します。

心房細動中に血栓ができるのは、左心耳と呼ばれる袋状の組織です。左心耳に対する治療を検討します。左心耳をプラグで塞ぐ左心耳閉鎖術や、左心耳を外科的に切除する左心耳切除術があります

カテーテルを使用して心臓の内側から左心耳の入り口を塞ぐようにプラグを挿入する方法です。左心耳内に血栓ができても、飛ぶ出せないので脳梗塞・塞栓症が起こりにくくなります。

外科的に心臓の外から左心耳を切除する方法です。他の心臓手術と併せて行われることもありますが、単独で胸腔鏡を使って低侵襲で行われる方法もあります。

症状でどのくらい困っているか?

チェック5:症状の強さは?

心房細動の自覚症状は人によって感じ方が違います。全く症状がない方から、症状が強く日常生活が制限される方がいます。症状の強さを(modified)EHRAスコアで表現することが一般的です。

modified EHRA スコア
スコア症状説明
1症状なし
2a軽症症状はあるものの日常生活に支障はなく、症状は気にならない
2b中等症症状があり、日常生活に支障はないものの、気になり困っている
3重症症状が強く、日常生活に支障を来している
4強い障害症状が非常に強く、日常生活が続けられない
modified EHRA score

心房細動の典型的な症状だけではなく、心不全の進行による症状もここに含まれます。

自覚症状により日常生活に支障をきたしている場合心機能低下・心不全を呈している場合は、心房細動自体に対する治療を行います。特に、正常のリズム維持を目指すリズムコントロールを行います。特にアブレーション治療が効果を発揮します。

症状で困っている、心不全に関与してそうな心房細動はアブレーション治療をお勧め!

心房細動の出現頻度・持続時間はどのくらいか?

心房細動は進行する不整脈です。心房細動の頻度が増え、持続時間が長くなることを進行していると判断します。

チェック6:心房細動の頻度や持続時間

発作性心房細動(1週間以内に停止)でも、下記のAさんやBさんのように発生頻度や持続時間で広い幅があります。

心房細動が期間中のどの程度の割合で出ているか表現することを心房細動バーデンといいます。

AさんとBさんを比較すると、同じ発作性心房細動であってもバーデンがまったく違います。

どのくらい進行しているかを判断する上で、心房細動バーデンは大事な項目です。バーデンが増えてくると心房細動が進行している証拠です。

ただし、心房細動を認めてもバーデンが変わらない方もいます。

心房に影響を与える要素をどれくらい持っているか?

心房細動の有効性を推測する上で、心房自体や心房細動の起きやすさに影響する要素がでれくらい持っているかを調べます。

チェック7:心房に影響を与える要因があるか?

心房細動は、心房に負担をかけることで発生しやすくなります。心房の働きに影響を与える要因は以下のようなものがあります。

  • 加齢
  • 心血管疾患のリスクとなるもの(喫煙、アルコール、肥満、高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群など)
  • 併存疾患(心不全、慢性肺疾患、慢性腎臓病など)

改善可能なものは積極的に介入します。特に、アルコール、肥満、睡眠時無呼吸症候群はきっちりと指導されていないこともあります。

介入できるライフスタイルの改善は積極的に促す

チェック8:心房の変化を心エコー検査で評価

心房細動が発生するような状況もしくは心房細動自体により心房に変化が生じることがあります。

【心房に生じる変化】

  • 左心房の拡大
  • 心房の機能低下
  • 心房の筋肉が線維化に置換

心房の大きさや機能は心エコー検査で評価することができます。線維への置換は画像検査で確認することは難しいです。

拡大した左心房は心房細動が続きやすく、アブレーション治療後の再発が多いとされています。さらに、脳梗塞のリスクも上がります。

心エコー検査の結果で、アブレーション治療の効果などをある程度推定する

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