ここでは、心室頻拍に対するアブレーション治療について説明します。心室頻拍についての説明はこちらをご覧ください。
心室頻拍を診断する
心室頻拍のアブレーション治療では、心室頻拍の機序や回路をしっかり診断することが大事です。
- 心室のどのあたりが不整脈に関与しているかを推定する
- 局所型か?リエントリー型か?
- 心室の電気情報からターゲットを絞る
心室のどのあたりが不整脈に関与しているかを推定する
心室頻拍が心室のどの辺りが関与して発生しているかを、次の二つのポイントで推定します。
- 心電図の波形から発生源を推定する
- 心臓の状態(例; 心筋梗塞を起こした部位など)から推定する
心電図の波形から発生源を推定する
心室頻拍中に行った心電図から、大まかですが不整脈の原因となる心室のエリアを推定することができます。
- 流出路エリアか心尖部エリアか
- 左室側か右室側か中隔か
心臓の状態から推定する
心エコー検査や心臓MRI検査などの画像検査の情報から、心室のダメージを受けている位置を把握します。心室のダメージを受けた場所は、リエントリー型心室頻拍に関与しがちです。
例:心筋梗塞の既往があると、梗塞領域に関与した心室頻拍がでやすい
局所型かリエントリー型か
心臓電気生理検査にて判断します。専門的な知識を要します。
- 心臓内に配置した電極カテーテルで、電気信号をひろったり、電気刺激を加えることで診断を行います。
- 不整脈が持続していれば、そのメカニズムを精査します。
- 持続していなければ、薬剤を負荷したり、いろいろなパターンで電気信号を加えることで不整脈を誘発します。
局所型の心室頻拍
リエントリー型の心室頻拍
心室の電気情報からターゲットを絞る
局所型かリエントリー型かを判断した後、最も重要な原因が右心室にあるか左心室にあるかを判断します。心臓電気生理検査と3次元マップを駆使して診断します。以下の2点に注目します。
- 心筋の状態を見る(不整脈ではない時の)
- 不整脈中の電気の流れをみる
心筋の状態を見る(不整脈ではない時の)
不整脈ではない状態で、心筋の電気情報を収集してダメージのエリアを絞ります。
- 電極カテーテルで心筋の電気情報を収集していきます。収集した電位情報を3次元マップでで表示します。
- 心室のダメージを受けている場所は、電気信号が弱くなっています。視覚的に確認できます。
- ダメージを受けているエリアは電気が遅く通過したり、伝導がブロックされる場所があることでリエントリー回路の成立に関与します。
不整脈中の電気の流れをみる
不整脈を発生させ、実際に推定される場所が不整脈に関与していることを確認します。
不整脈発生
局所タイプの場合
リエントリータイプの場合
- 頻拍が発生したら、再度電極カテーテルで不整脈中の電気情報を記録していきます。
- 局所タイプであれば、発生源を絞り込みます。
- リエントリータイプであれば、電気信号がどのように伝導するかをみて回路を同定します。とくにダメージを受けている場所が、実際に不整脈中に重要な役割をになっているかを確認します。回路の成立に重要な場所を判断します。
ペーシングの波形で決める方法(ペースマップ)
心室頻拍に対するアブレーションする場所を決める際に、ペースマップという方法を使うこともあります。心室にカテーテルから電気刺激(ペーシング)して、心電図の波形を確認します。頻拍時の心電図とどのくらい当てはまるかを見ていきます。
重要な場所(局所タイプなら原因となる場所、リエントリータイプなら回路の中)であれば、ペーシングした波形と頻拍の波形が一致します。
ペースマップの流れ
心室頻拍を誘発し、記録する。または、治療までに記録されていた発作中の心電図を参考にする。
重要だと思われるエリアに電極カテーテルを進めます。
電極カテーテルから電気刺激を加え(ペーシングして)、心室頻拍を模した状況を作ります。
その場所をアブレーションする根拠とする
心室頻拍のアブレーション
治療エリアへアプローチする
心室頻拍の治療ターゲットへアプローチする方法は、ターゲットがどこにあるかで使い分けます。左心室や右心室の内側から治療する場合と心臓の外側から治療する場合があります。
左心室内へのアプローチ
左心室内にカテーテルを進める方法は、動脈アプローチと心房中隔アプローチがあります。
右心室内へのアプローチ
右室内へは静脈アプローチでカテーテルを進めることができます。
心臓の外側からアプローチ
心臓の内側からのアブレーションでは無効の場合、心臓の外側から知立することもあります。
心臓は心のう腔と呼ばれる場所に位置し、体の外から針を刺して心のう腔へカテーテルを進めるアプローチです。
アブレーションする
「局所タイプ」心室頻拍のアブレーション
発生源を正確に把握してアブレーションを行います。局所型心室頻拍の場合、治療戦略は心室期外収縮と同じです。心室期外収縮の項目をご覧ください。
「リエントリータイプ」心室頻拍のアブレーション
回路の成立に重要な場所を見つけてアブレーションします。
どのようにアブレーションする場所をデザインするかについていろいろな方法があります。心臓の状態によってもアブレーションのエリアが異なります。
心室頻拍アブレーションのポイント・注意点
- 心室頻拍の原因となる場所がカテーテルの届きにくい場所であったり、心室の壁の深いところや外側であったりすることがあります。
- 治療効果が不十分であったり、早期再発をすることがあります。
- 動脈アプローチを行なった場合は、血管系の合併症の頻度が上がります。術後の安静も慎重に行います。
- 心外膜アプローチは、習熟が必要な手技です。