発作性上室頻拍のアブレーション治療について説明します。発作性上室頻拍についての説明はこちらをご覧ください。
診断をつける
発作時の心電図にて発作性上室頻拍と診断された場合、心臓電気生理検査にて以下の鑑別を要する不整脈の診断をつけます。
心臓電気生理検査(EP study)
EP studyを行うために、そ径部や首の静脈から電極カテーテルを挿入します。そのカテーテルで、電気信号をひろったり、電気刺激を与えたりします。
- 心臓の刺激伝導系の働きをみたり、不整脈が起きそうな性質を持っていないかチェックします。不整脈が起きている時は、不整脈の性質を確認します。
- 心臓に電気刺激を加えることで、脈拍を早くしたり、乱れた状態にします。それにより不整脈をあえて誘発します。不整脈を誘発するために、脈が速くなる点滴を行うこともあります。
発作性上室頻拍にて鑑別する不整脈
発作性上室頻拍が疑われ心臓電気生理検査を行う場合は、以下の不整脈の鑑別を行います。
- 房室結節リエントリー性頻拍
- 房室リエントリー性頻拍
- 心房頻拍
房室リエントリー性頻拍と房室結節リエントリー性頻拍は、どちらも電気信号が旋回するリエントリータイプの不整脈です。
心房頻拍は、局所タイプの不整脈です。
- 房室リエントリー性頻拍
房室結節を介した「リエントリー型」の不整脈の一つ
房室結節を通過する時に、通常の速度で通過する経路とゆっくり通過する経路を持っている場合に起こりえます。
その二つの経路を使って電気信号がクルクル旋回(リエントリー)することで発生します。
- 房室結節リエントリー性頻拍
房室結節を介した「リエントリー型」の不整脈
心房と心室を電気的につなぐ線維(副伝導路)を持っている方におきます。
副伝導路と房室結節を使って電気信号がクルクル旋回する回路が成立します。
- 心房頻拍
「局所型」不整脈が心房内で連発
心房のどこかから、電気信号が連続的に発生された状態です。
心房頻拍のアブレーション治療は別のところで説明します。
房室リエントリー性頻拍、WPW症候群のアブレーション
房室リエントリー性頻拍の電気回路は、副伝導路とよばれる線維を通過することで成立しています。副伝導路がなければ、リエントリー回路が成立しなくなり、頻拍が起きなくなります。房室リエントリー性頻拍のアブレーションのターゲットは副伝導路になります。
副伝導路の位置はどこ?
房室リエントリー性頻拍と診断されたら、ターゲットとなる副伝導路の場所を探していきます。副伝導路は房室弁と呼ばれる心房と心室の弁のところにあります。
- 僧帽弁:左心房と左心室の間
- 三尖弁:右心房と右心室の間
人によって副伝導路が存在する場所は違うので、検索していきます。副伝導路の伝導に関しては、WPW症候群の項目をご覧ください。
治療する部位へのアプローチは?
副伝導路が右心房と右心室の間なのか、左心房と左心室の間なのかを判断したら、アブレーション用カテーテルを治療のターゲットに進めます。副伝導路の位置でアプローチする方法が違います。
副伝導路が三尖弁輪(右心房と右心室の間)にある場合
アブレーション用カテーテルを静脈アプローチで進めます。
副伝導路が僧帽弁輪(左心房と左心室の間)にある場合
副伝導路の位置が左心房と左心室の間の場合は、二つのアプローチ方法があります。
アブレーションする
副伝導路の付着部を心房側もしくは心室側からアブレーションして伝導を途絶させます。
副伝導路の伝導がなくなれば、房室リエントリー性頻拍は起こらなくなります。
成功率は?
- 成功率は95%程度で、わずかに再発の可能性があります。
- 副伝導路の位置が房室結節に近い場合は、アブレーションにより房室ブロックのリスクが高くなります。
房室結節リエントリー性頻拍のアブレーション
房室結節を通過する時に、通常の速度で通過する経路とゆっくり通過する経路があることで成立しているリエントリー性の不整脈です。
どちらかの経路を離断すれば回路が成立しなくなりますが、通常の速度の経路は重要です。そのため、ゆっくり通過する経路がターゲットとなります。
房室結節二重伝導路:通常の伝導路とゆっくり伝導する伝導路を持っている方がいます。
この二つの経路を使って、電気興奮が回路を形成しています。
治療する部位へのアプローチは?
房室結節リエントリー性頻拍は、静脈アプローチで治療できることがほとんどです。
アブレーションする
アブレーションのターゲットは房室結節を伝導する二つの経路のうち遅い伝導路(遅伝導路)になります。
この遅い伝導路は通過する場所がある程度決まっているので、想定される場所で電位情報を指標にアブレーションする場所を決めます。
遅伝導路の伝導がブロックされれば、房室結節リエントリー性頻拍は起こらなくなります。
成功率は?
- 成功率は95%程度で、わずかに再発の可能性があります。
- 遅い伝導路が通常の伝導路に近接している場合があります。同時にアブレーションされると房室ブロックのリスクが生じます。
- まれに、誘発できない場合があります。また、非常に診断が難しい場合もあります。