糖尿病を乗り越える:管理と生活改善のポイント

糖尿病には怖い印象があると思います。しっかりと糖尿病に向き合い、きちんと治療をしていけば、糖尿病がない方達と同じように歳をとっていくことができます。

ここでは、生活習慣病である2型糖尿病の治療について説明していきます。特に2型糖尿病は生活習慣病なので、しっかりとライフスタイルを見直す必要があります。そして、必要に応じてくすりの力を借りましょう。

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糖尿病を管理する

糖尿病の治療が始まったら、血糖コントロールの目標に向かって治療がうまくいっていることを確認し続けることが必要です。定期的な診察が必要です。

目標のHbA1cを目指す・維持する

血糖値がうまくコントロールできているかは、血液検査にてHbA1cを測定することで判定します。

糖尿病診療ガイドライン 2019より

糖尿病の問題は合併症を引き起こすことですが、HbA1cを7%未満に維持できれば合併症のリスクが低下することが分かっています。血糖コントロールの目標は7%未満であり、そしてそれを維持していきましょう!

合併症を予防するための管理目標

糖尿病の合併症発症を防ぎ、健康な状態を維持すること。合併症を予防するにはHbA1c 7%未満を維持を目指します。

無事に目標とするHbA1cに到達したら、それを維持していきましょう。糖尿病になるような体になってしまっているので、気をつけないと血糖値のコントロールは悪くなってしまいます。

合併症のチェックも定期的に行おう

糖尿病がコントロールできれば、合併症が発生するリスクは低下します。ただし、知らないうちに進んでないかを定期的に評価することも必要です。

歯科にも定期的に受診

糖尿病になると歯肉炎になりやすくなります。定期的に歯科で歯石除去などの治療をうけましょう。歯磨きの時はやさしく歯肉をマッサージし、フロスをしてつまった食べ物を取り除きましょう。

糖尿病を治療する

糖尿病を治療する(=血糖値が上がり過ぎないようにする)ためには、食事療法、運動療法と薬物治療があります。

食事療法が基本です

糖尿病はグルコースとインスリンの関係が破綻していることで生じているので、そこの関係を改善するようにライフスタイル(食事)を見直しましょう。ポイントは膵臓の負担を減らすことです。

血糖値を上げにくくし、膵臓の負担を減らす食事のポイントには以下のような項目が挙げられます。

血糖値が急激に上がらないようにするポイント
  • 摂取カロリーや栄養バランスを意識する:炭水化物の比重を減らす
  • 低GI(グリセミック指数)の食品を選ぶ:血糖値は上がりにくく、肥満も抑制する
  • 食物繊維を多く食べる:血糖値は上がりにくく、セカンドミール効果にも期待
  • よく噛んで食べる

炭水化物(ごはん、パン、めん類など)の比重を減らす

食事バランスガイドを参考にします。1日の総カロリー2200kcalを基準とすると、主食の摂取は、1日 5〜7つ(SV)となります。(主食1つ分の基準:穀物由来の炭水化物が約40g)

下の表から、1日の炭水化物摂取が5〜7つになるようにしましょう。

「つ(SV)」サイズ料理名
1 つ・ご飯 100g
・おにぎり 1個(ご飯 100g)
・食パン 1枚
・たこ焼き(小麦粉 50g)
・お好み焼き(小麦粉 50g)
1.5 つ・ご飯 150g
2 つ・ご飯 200g
・うどん 1杯(茹でうどん 300g)
・そば 1杯(茹でそば 300g)
・パスタ 1杯(乾 100g)
・ラーメン 1杯(中華茹で麺 230g)
農林水産省のホームページより作成

朝食で食パン2枚(2つ)、昼食でうどん1杯(2つ)とおにぎり1個(1つ)、夜はカレーライスでご飯300g(3つ)とすると、合計8つになります。

そのため、5〜7つにしようと思ったら、朝の食パンを1枚に減らす、昼のおにぎりを食べない、カレーライスのご飯を200gにする、などの工夫をします。

いつも使っている自分のお茶碗でどのくらいご飯をついだら、100g、150g、200gになるかを確認してみましょう。まずは、150gくらいを目安にしましょう。

せんべいおかきなどは米でできてるので炭水化物に含まれます。おやつとして食べるのを控えましょう。

低GI食品を選択する

急に血糖値があがると膵臓に強い負担がかかります。血糖値が上がりにくい食品を選びましょう。

どのくらい急激に血糖値をあげるかを知る指標としてグリセミック指数(Glycemic Index: GI)が用いられます。このGIの値が低い食品は血糖値の上昇が緩やかであるということになります。

グリセミック指数(GI)とは

食品ごとの血糖値の上がりやすさを表現した数値。

どのくらい急激に血糖値をあげるかを知る指標としてグリセミック指数(Glycemic Index: GI)が用いられます。このGIの値が低い食品は血糖値の上昇が緩やかであるということになります。

炭水化物 50gあたりの血糖値の上がりやすさを、グルコースを100として相対的に計算された数値です。グリセミック指数が高い方が血糖値が上がりやすくなります。

ただし、GI値が低くてもたくさん食べたらグルコースは上昇し、インスリンもたくさん分泌されます

炭水化物のGI値を確認しましょう。

低GIの玄米や全粒粉・全粒穀物は血糖値の急な上昇を避けるだけでなく、大腸で短鎖脂肪酸を発生させます。短鎖脂肪酸は腸の状態を改善させ、免疫の改善や肥満解消などの効果も期待されます。

白いご飯ばかりでなく玄米を取り入れましょう。また、パンを選ぶ際に全粒粉パンを選択するようにしましょう。

食物繊維が多い食品を選ぼう

食物繊維が多い食品(野菜、いも、豆類(大豆を除く)、きのこ、海藻など)を摂取すると消化・吸収に時間がかかるようになりグルコースの急な上昇を抑えることができます。

野菜、いも、きのこなどを使ったおかず(副菜を)、毎食時に1〜2品食べると食物繊維を必要量を見たすことになります。

コンビニエンスやスーパーでお惣菜を購入する際にも副菜を意識しましょう。

食物繊維が多い食品を摂ると、次の食事を食べた後の血糖値上昇も抑えることがわかりました。これをセカンドミール効果と呼びます。

間食するなら食物繊維を多いのものを!

食事と食事の間にどうしても空腹を感じることもあるでしょう。

その際には食物繊維が多いものを間食にしましょう。それにより、次の食事の血糖値が上がりにくくなることも期待できます。

  • さつまいも:芋類でもGIがやや低め、食物繊維豊富
  • ドライフルーツ
  • アーモンド
  • ポップコーン
  • 酢昆布
  • グラノーラ(小麦ふすま・ブランが多いもの)

ただし、間食の食べすぎは避けましょう。

運動で糖を消費しよう

運動習慣は健康寿命を延伸させる重要な要素の一つです。

運動の糖尿病に対する効果
  • グルコースが消費され、血糖値が下がる
  • 血糖値を下げるホルモン(インスリン)が効きやすくなる

定期的な有酸素運動は、身体活動で筋肉を動かすとグルコースが消費され血糖値は下がります

さらに、運動により血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きやすくなります。

できるだけ体を動かすようにしましょう。特に食べすぎたと感じた時は、特に動くことで血糖値が上がらないようにしましょう。

体の状態や治療の内容で運動が制限されることもあります。かかりつけの医師にどの程度の運動をしていいかを聞いてみましょう。

糖尿病の薬物治療

糖尿病と診断された後に食事療法と運動療法は基本の治療として続けていくことが必要です。しかし、それだけでは血糖値のコントロールが難しいことも少なくありません。

血糖値が高い状態が維持されると、糖尿病の合併症が生じてしまいます。それを避けるためにはクスリのちからも借りる必要があります。

現在、糖尿病の薬物治療は下記の種類があります。

糖尿病の薬は多くの種類があります。どんな種類があって、どのように選択されるかについては以下の投稿で説明します。

この項は日本糖尿病学会のコンセンサスステートメント「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」を参照しています。

インスリン

血糖値のコントロールに膵臓から分泌されるインスリンが働いていますが、インスリン分泌されない1型糖尿病の方やインスリン分泌が極端に低下している2型糖尿病の方は体の外からインスリンを注射する必要があります。

インスリンの注射には、超速効型、速効型、中間型、混合型、配合溶解、持効型溶解があります。それぞれの特徴があり、患者さんの状態によって使い分けられています。

インスリンを用いた治療は、糖尿病専門の医師に相談した方が良いでしょう。

注意すべき副作用

糖尿病の薬を使用する上で、いくつかの副作用に注意が必要です。

低血糖

血糖値が下がりすぎた状態を低血糖と言います。低血糖の症状としては、自律神経症状、中枢神経症状、大脳機能低下による症状があります。

自律神経症状

  • 冷や汗をかく
  • 動悸がする
  • 手が震える
  • 強い空腹感

中枢神経症状

  • 疲労感
  • 脱力感
  • 眠気・あくび
  • 集中力の低下

大脳機能低下

  • 意識が朦朧とする
  • 意識がなくなる
  • 反応がなくなる

低血糖は重篤になると意識がなくなったりすることがあります。自覚症状がはっきりしないこともありますが、いつもと違うと感じたら低血糖かもしれないと疑いましょう。

下記の薬は低血糖を引きおくす可能性があります。処方を受ける際は低血糖の対処の説明も受けましょう。

単剤で低血糖リスクがある薬
  • SU薬
  • グリニド薬
  • インスリン

消化器症状

腹部膨満感、腹痛や下痢など胃や腸の症状が出ることがあります。多くの内服薬の副作用情報には消化器症状が記載されていますが、頻度が低いことが多いです。その中でも下記の薬では消化器症状の頻度が多めです。

α-グルコシダーゼ阻害薬腹部膨満感、おならが増える、腸閉塞、下痢など
ビグアナイド薬下痢、悪心、食欲不振、腹痛など
GLP-1受容体作動薬下痢、便秘、嘔気・嘔吐など

症状が強い場合は、休薬や減少にて改善することもありますので、処方された先生と相談しましょう。

その他の副作用

SGLT2阻害薬頻尿、尿路・性器感染症
チアゾリジン薬浮腫、体重増加
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