中性脂肪の増加が意味する健康リスク

脂質は重要な栄養素ですが、脂質が高くなると生活習慣病を引き起こします。脂質の値が異常になった状態を脂質異常症といいます。

脂質異常症の中でも、中性脂肪が高くなる原因と問題点について説明します。

ここでは、中性脂肪はトリグリセリドとかトリグリセライドとか表現されますが、この項では「中性脂肪」で表記します。

コンテンツ

高中性脂肪血症の定義は 150 mg/dl 以上

高中性脂肪血症の定義

中性脂肪(空腹時) 150 mg/dl 以上

または、食事に関係なく 175 mg/dL 以上

日本動脈硬化学会の脂質異常症の診断基準では、空腹時に測定した血液検査で150mg/dl以上で高中性脂肪血症と診断されます。生活指導や薬物治療が必要になります。食事に関係なく175mg/dl以上でも診断となります。

血液検査を、空腹時に行ったか食事に無関係で行ったかで定義が異なります。

中性脂肪の増加が意味すること

健康診断などで高中性脂肪(トリグリセライド)血症を指摘される方は多いです。

「中性脂肪」は貯蔵脂質としての役割が大きく、重要なエネルギー源です。中性脂肪が過剰になると、皮下脂肪や内臓脂肪として貯蔵され肥満になります。

中性脂肪の増加は生活習慣の乱れ、特に食事の乱れを表していると言えます。

また、持続的に中性脂肪が高いことはメタボリックシンドロームや非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の存在を示唆します。

中性脂肪の値はメタボリックシンドローム(いわゆるメタボ)の診断にも使用されます。

メタボリックシンドロームの診断についてチェック

日本の基準では腹囲の増加が必須項目です。さらに脂質異常、血圧上昇、血糖上昇の3項目のうち2項目以上を満たした場合に「メタボリックシンドローム」と診断されます。

必須項目
腹囲(ウエスト周囲径)男性 85 cm 以上
女性 90 cm 以上
選択項目(3項目のうち2項目以上)
高トリグリセリド血症
 かつ/または
低HDLコレステロール血症
150 mg/dl 以上
and/or
40 mg/dl 未満
収取期血圧(上の)血圧
 かつ/または
拡張期血圧(下の)血圧
130 mmHg 以上
and/or
85 mgHg 以上
空腹時血糖110 mg/dl 以上
表. メタボリックシンドロームの診断基準

中性脂肪が高いことによる問題は?

血液中の中性脂肪が上昇しても、自覚症状はありません。脂質異常症に気づくためには血液検査が必要です。

高中性脂肪血症により以下ような合併症が起こる可能性があります。

  • 心血管病:狭心症や心筋梗塞につながる可能性があります
  • 急性膵炎:膵臓に炎症が起こると膵臓にダメージが残り、機能が低下する可能性があります

心血管病

高中性脂肪血症は心血管病につながることがわかっています。いわゆる動脈硬化が進行するリスクとなります。

中性脂肪はコレステロールのように直接動脈壁に蓄積するわけではありませんが、過剰な中性脂肪が分解された一部が体内に残って動脈に炎症を起こします。

最近では、悪玉コレステロール(LDL)よりもタチの悪い超悪玉コレステロールと中性脂肪の関連がわかっています。

急性膵炎

高中性脂肪血症はいくつかのメカニズムにより膵臓の細胞を損傷させ膵炎となります。重症化することもあり、より中性脂肪が高い方がより重症になるとの報告もあります。

急性膵炎になると、上腹部痛を自覚することが多いが背中まで痛くなることもあります。重症化すると意識状態が悪くなったり、血圧が低下しショック状態になることもあります。

膵臓の炎症により、膵臓が壊死します。どの程度の障害を受けているかで重症度が変わります。

中性脂肪が高くなる生活習慣は?

高中性脂肪血症は、食事の影響、肥満、運動不足、喫煙、アルコール、ストレスなどが関係しているといわれています。

中性脂肪が上がりやすい食事

血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪など)は、食べたものが消化・吸収されて取り込まれることで合成されていきます。

そのため、食事の内容が強く脂質異常症に影響を与えています。

中性脂肪が高くなる要因としては、エネルギー量のとりすぎがあげられます。特に下記のような食品に注意しましょう。

注意したい食品:炭水化物・果糖・アルコール・飽和脂肪酸

中性脂肪が上がりやすい食事
  1. 炭水化物が多い
    • 特に精製された白い炭水化物(白米や小麦粉)
  2. 果糖とりすぎ
    • 果糖が多い食品:くだもの、はちみつ、清涼飲料水、野菜・果物のジュース
  3. 習慣的なアルコール
  4. 飽和脂肪酸が多い(肉類が多い、など)

それぞれの食材が中性脂肪を上げる理由は下記をご覧ください。

炭水化物炭水化物を多く摂ると血糖値が急に上がる
血糖値を下げようと膵臓からホルモン(インスリン)が大量に分泌される
インスリンの働きでブドウ糖はグリコーゲンになって筋肉や肝臓に取り込まれる
ブドウ糖が余ったら肝臓で中性脂肪に作り変えられる
中性脂肪は肝臓に蓄積したり、血液に流れ出て全身に蓄積したりする
果糖果物や清涼飲料水に多く含まれる果糖はブドウ糖とは違う経路で代謝されます。
果糖は腸で吸収された後、肝臓で代謝され中性脂肪などに変換されます。果糖は肥満の原因になりやすく、脂肪肝の原因にもなります。取りすぎに注意が必要です。
アルコールアルコールの代謝の過程で中性脂肪が増えます
アルコールを摂取し肝臓に入ると、脂肪酸(中性脂肪の原料)が増える方向へ働きかけます。肝臓で生成された中性脂肪が肝臓に蓄積したり、血液中へ流れていきます。
アルコールはできるだけ飲まないようにするのが、健康の維持に必要です。
飽和脂肪酸飽和脂肪酸は直接中性脂肪の上昇に繋がりませんが高いエネルギー源です。体のエネルギーが満たされていると余ったエネルギーは中性脂肪へ変換され蓄積します。
飽和脂肪酸を含む食品の取りすぎに注意しましょう。

食事以外のライフスタイル

中性脂肪が高くなる要因に、喫煙・運動不足・ストレスがあります。

  • 喫煙:喫煙習慣は中性脂肪の合成を促進します。
  • 運動不足:有酸素運動は脂質を燃焼させます。運動不足は脂肪が燃焼せず、蓄積する方向に進みます。
  • 過剰なストレス:強いストレスにさらされると、中性脂肪が上昇する可能性があります。

二次的な高中性脂肪血症

食事やライフスタイルによる中性脂肪上昇以外に、病気や内服などで中性脂肪が高くなる場合もあります。

  • 糖尿病
  • ネフローゼ症候群
  • 慢性腎臓病
  • 甲状腺機能低下
  • 遺伝的な問題
  • 一部の内服薬

中性脂肪が高いといわれたら

よっぽど中性脂肪が高くないと自覚症状はないため、日常生活に支障がありません。しかし、中性脂肪が高いことは、その背景に多くの生活習慣病が潜在していることを示しています。

健康な状態を維持するためには、「高中性脂肪血症」に向き合ってしっかりと管理をする必要があります。

しっかりとライフスタイルを見直し、次に控えている他の病気を表に出さない努力が求められます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
コンテンツ